政治不信にけじめを【24衆院選】
3年ぶりの政権選択の機会となる衆院選が公示された。進む少子高齢化や格差の拡大など山積する諸課題への対応に加え、自民党派閥の裏金事件を受け、今回は「政治の信頼回復」という重いテーマが加わる。政治不信にけじめをつけ、政策遂行に必要な活力を取り戻せるかが問われる。
1日に発足した石破茂首相(自民党総裁)率いる内閣の支持率は、スタート時としては低い水準にとどまった。期待感がいま一つだった原因は、総裁選出後の首相に過去の言動との不一致があったことだけではない。自民党内の「疑似政権交代」で裏金問題のマイナスイメージを払拭しようという試みが、国民の側から見透かされていたと受け止めるべきだろう。
衆院選候補者選定の過程で世論の厳しさを知った首相は、当初方針を覆して一部の「裏金議員」の非公認に踏み切り、政治資金収支報告書への不記載があった者の比例代表への重複立候補も認めなかった。自民党コミュニティーには衝撃を与えた首相の決断だったが、立憲民主党の野田佳彦代表が言うように、はたから見れば「大半は公認された」わけで、自民党からの出馬を認められた処分対象者は30人を超える。
使い道を公開する必要がない政策活動費を廃止するのかしないのか。政治資金を監視する第三者機関の在り方は。「政治とカネ」に関する論点は多い。論戦を通じて信頼回復に向けた自民党の覚悟が本物なのか、見極める必要がある。
衆院選では、物価上昇を上回る賃金増をどう実現するかや、日本周辺の安全保障環境が悪化する中での外交政策なども重要なテーマだ。立民は「政権交代こそが政治改革」(野田氏)と訴え、自民・公明両党を過半数割れに追い込むことを目標に掲げるが、立民の経済政策や外交方針が国民に浸透しているとは言い難い。
今回は野党の選挙協力が3年前より大きく後退したことも野党陣営の不安材料だ。与党の過半数獲得を阻止した後にどのような政権を目指すのかが見えてきておらず、戸惑っている有権者もいるだろう。
理想の政党、理想の候補者はいないかもしれないが、結果次第では連立の枠組み変更や、政権交代が生じるかもしれない重要な局面だ。ベストは望めないにしても、有権者は各党の公約を吟味し、「よりまし」な選択を探らなければならない。
[時事通信社]
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