捜査機関を信頼、被告に疑念=裁判官、過ちは認めず―自白偏重の構造問題指摘・専門家
裁判所が捜査機関作成の自白調書を証拠として採用する一方、法廷での被告の訴えを信用せず、誤って有罪を言い渡すケースが繰り返されたのはなぜか。専門家は「捜査機関を信頼する一方、被告はうそをつくと考えやすい」「過ちを認めることが少ない」などと、裁判官による自白偏重の構造的問題を指摘する。
裁判官を37年間務めた元東京高裁判事の木谷明弁護士は「自白を『証拠の王様』と考え、警察官は正義のために仕事していると思い込んでいる裁判官が多い」と語る。「被告が違法な取り調べを受けたと訴えても、警察官が偽証罪に問われ得る法廷で虚偽証言するはずがない」と見なす傾向にあるという。
一方で、「裁判官は、被告が罪を免れようとしてうそをつきかねないと考えがちだ」と説明。「とんでもない間違いだが、今でもそういう例がたくさんある」と憂えた。
「現状の刑事裁判制度を強く信頼し、間違いは少ないはずという自負が問題を矮小(わいしょう)化し、構造的な課題に目が向けられていない」と指摘するのは、えん罪に詳しい高平奇恵・一橋大大学院准教授(刑事訴訟法)だ。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則を徹底できない一方、「自らの過ちを認めにくい」と問題視する。
高平准教授は、容疑者や被告の自白獲得を目的とした取り調べが行われているとした上で、「自白調書が捜査機関の主張を代弁するものになっており、真実をゆがめることがあると認識すべきだ」と警鐘を鳴らす。「裁判員裁判に限らず、全ての事件で捜査段階の調書に依存しない審理を実現すべきだ」とも訴えた。
木谷弁護士も「裁判官がえん罪や誤判について十分勉強していないのではないか。誤判原因を究明する組織を立ち上げないといけない」と話している。
[時事通信社]
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