7割超で「自白」、有罪証拠に=専門家、司法の問題指摘―殺人再審無罪20人
殺人罪で有罪確定後に再審で無罪が言い渡されたのは戦後少なくとも18件20人に上り、このうち7割を超える13件15人は、自白調書が有罪の証拠とされていたことが12日、分かった。13件の再審開始決定や再審判決では自白の信用性や任意性が否定されており、専門家は「自白偏重の捜査や、それをチェックできない裁判所の問題が表れている」と指摘している。
無罪が確定した袴田巌さん(88)に対する先月26日の再審判決では、有罪の証拠とされた検察官作成の自白調書を「実質的な捏造(ねつぞう)」と認定しており、密室で行われる取り調べが改めて問題視されそうだ。
時事通信は過去の再審判決や再審開始決定の内容を分析し、集計。それによると、袴田さん以外で死刑確定後に再審無罪となった「免田」(熊本県)、「財田川」(香川県)、「松山」(宮城県)、「島田」(静岡県)の各事件も捜査段階で自白調書が作られていた。
その後否認に転じたものの、裁判所は調書の任意性や信用性を認め、有罪と結論付けた。一方、再審ではいずれも信用性が否定され、無罪となった。
無期懲役が言い渡された「布川」(茨城県)、「大阪女児焼死火災」(大阪府)などの事件でも自白調書が有罪の根拠とされた。これらの事件の再審判決は、捜査機関の取り調べに誘導や虚偽情報伝達の疑いなどがあり、調書に問題があったと判断した。
捜査段階から否認を貫いたのは「東京電力女性社員殺害事件」(東京都)や「榎井村事件」(香川県)など5件5人。このうち3件3人は「共犯者」とされた人の供述などを基に有罪認定されていた。
一橋大の村井敏邦名誉教授(刑事法)は「裁判所も自白調書に依拠し、えん罪を生んできた。取り調べでの弁護人の立ち会い、自白強要罪の創設なども必要だが、裁判所が変われば、捜査も自白偏重から脱却するはずだ」と話している。
[時事通信社]
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