護衛艦にもネット環境整備へ=使用ルールに課題も―若者応募増に期待・海自
不自由だった海上自衛隊員の通信事情が大きく変わりそうだ。海自は航海中でも隊員が自由にインターネットを使えるよう、艦艇に米スペースX社の衛星通信サービス「スターリンク」を導入する方針を固め、2025年度予算の概算要求に整備費を計上した。幹部はネット環境改善による志願者増に期待を寄せるが、通信ルールなど課題もある。
海自は幹部候補生が乗る練習艦「かしま」と「しまかぜ」で、5月からスターリンクの試験運用を開始。結果が好評だったことを踏まえ、概算要求に48隻分の整備費を計上した。28年度までに主要艦艇のほぼ全てに搭載する計画だ。
護衛艦の艦内には普段から携帯電話の電波が入らず、遠洋に出れば外でも不通になる。隊員は事前登録した家族らとメールでやりとりできるが、衛星回線との接続は1日2回に限られる上、通信速度や容量の制約で文章以外はほとんど送れない。幹部は「常時ネット接続が当然の世代には大きなストレスだった」と話す。
試験運用では艦内の食堂や居住区画に無線通信Wi―Fi(ワイファイ)のルーターを設置。隊員は私有のスマートフォンやタブレットを接続できる。使用できるのは勤務時間外のみだが制約は設けず、高速通信でユーチューブなどの動画も自由に閲覧できる。トラブルは特になく、隊員からは「艦内生活に革命が起きた」と好評だという。
ただ、スターリンクを導入済みの米海軍などでは機密扱いの艦艇の位置情報や航海中の写真をSNSなどに投稿したり、動画のダウンロードなどで契約容量をすぐ使い切ったりといった問題も起きている。本格導入にはモラルやルールの浸透も課題になる。
自衛隊は23年度の募集計画に対する達成率が過去最低になるなど、隊員確保に苦戦している。特に海自の艦艇勤務は、3段ベッドなど狭い艦内での集団生活や娯楽の少なさから敬遠されがちだという。海自はネット環境整備に加え、プライバシーに配慮したカプセルベッドの導入などで採用状況の改善を目指している。
[時事通信社]
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