袴田さんの無罪確定=再審で検察が上訴権放棄―逮捕から58年、戦後5例目
1966年に静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審で、静岡地検は9日、静岡地裁の無罪判決に対する上訴権を放棄した。逮捕から58年を経て、袴田さんの無罪が確定した。
戦後に起きた事件で死刑確定後に再審無罪となったのは5例目。
静岡県警の津田隆好本部長は9日、記者団の取材に応じ、袴田さんが置かれてきた状況について「申し訳なく思っている」と謝罪。「このような思いをお伝えしたいと思っているが、方法などについてはご本人の意向や関係者などと相談をした上で考えたい」と述べた。
事件では静岡県清水市(現静岡市)でみそ製造会社の専務一家4人が殺害され、従業員だった袴田さんが逮捕、起訴された。発生の約1年2カ月後に工場のみそタンク内で血痕が付着した「5点の衣類」が見つかり、静岡地裁は袴田さんが犯行時に着用したものだと認定。死刑を言い渡し、80年に最高裁で確定した。
先月26日の再審判決は、衣類に付着した赤みが残る血痕について「1年以上みそ漬けにされたら赤みは残らない」と指摘。5点の衣類を含む三つの証拠について、捜査機関による捏造(ねつぞう)だったと認定し、袴田さんを犯人とは認められないと結論付けた。
これに対し畝本直美検事総長は8日、談話を発表し、控訴しないことを表明。「到底承服できず、控訴して上級審の判断を仰ぐべき判決だ」と反論しつつ、「再審請求審の判断がまちまちになるなどして袴田さんの法的地位が長期間不安定な状況に置かれたことに思いを致し、控訴は相当ではないとの判断に至った」とした。
その上で、「法的地位が長期間不安定となったことについて申し訳なく思っている」と謝罪し、最高検として検証を行う方針を明らかにした。
袴田さんを巡っては静岡地裁が2014年、再審開始を認めるとともに釈放を決定。23年に再審開始が確定した。
[時事通信社]
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