2024-10-01 17:01政治

説いた「真心」どこに=石破新政権

 新政権を発足させた石破茂首相は自民党総裁選で、政治家のあるべき姿として「勇気と真心で真実を語る」と繰り返し訴えた。同時に、衆院解散に際しては「国民に判断材料を与えるのが新首相の責任」として、予算委員会で野党と本格論戦を交わす必要性を強調した。ところが、石破首相は先月30日、予算委を開かない10月9日解散を前提に、27日の衆院選投開票を表明。首相としての「真心」が問われようとしている。
 「勇気と真心」は、「政治の師」である渡辺美智雄元副総理の教え。総裁選出馬に合わせて発表した政策集にも、明記されている。先月27日の総裁選での決選投票直前の訴えでも「勇気と真心で真実を語る自民党をつくる」と明言した。
 また、石破首相が国民の判断材料として、一問一答形式の予算委を挙げたのは先月14日の日本記者クラブでの候補者討論会。地元鳥取県での出馬会見でも、開催に言及している。総裁選勝利から3日で、豹変(ひょうへん)した。
 予算委を開けば野党から、実態解明が進まない旧安倍派などの裏金事件や、安倍晋三元首相が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)のトップらと会っていたとされる問題で、追及されるのは必至。早めに解散した方が選挙に有利、との計算があるとみられる。野党が「論戦から逃げた」(野田佳彦立憲民主党代表)などと反発するのは当然だ。
 今後は、石破首相が衆院選で、いわゆる裏金議員を公認するかどうかも焦点。この関連で、忘れてならないのは、衆参両院の政治倫理審査会が5月、73(衆院44、参院29)人を対象に、自民党も賛成して全会一致で審査を議決していることだ。この中には、自民党が4月、正規の手続きを経て処分した議員も含まれる。
 主権者たる国民の代表が集う国会での全会一致は、「国民の総意」を意味する。しかし、これまで、一人も出席を申し出ていない。石破首相の言葉に当てはめれば、国民の総意にもかかわらず、国会での説明を拒む「勇気と真心」が疑われる議員ということになる。
 また、処分済みの議員を政倫審に出席しないことを理由に追加処分しても、「一事不再理」には当たらない。政倫審の審査対象を、無条件で公認すれば、国会の権威にかかわる。自民党に対する国民の風当たりも強まるだろう。
 もちろん、どういう手続きを踏んで解散しようとも、結果が全て。「三日変化」で真心を問われる石破首相に対し、国民がどういう審判を下すのか。「寛容度」が試されているとも言えよう。 
[時事通信社]

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