ストルテンベルグNATO総長退任へ=ウクライナ侵攻で調整力―日本との関係強化も
【ブリュッセル時事】北大西洋条約機構(NATO)のイエンス・ストルテンベルグ事務総長(65)が10月1日、任期満了を迎え退任する。在任期間は10年。近年は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けた危機対応や北欧2国の加盟で調整力を発揮するとともに、中ロの脅威を踏まえ日本などインド太平洋のパートナー国との関係深化も進めた。
元ノルウェー首相のストルテンベルグ氏は、2014年10月に事務総長に就任。22年2月のウクライナ侵攻開始直後から同国支援を打ち出し、欧州東部の防衛強化に取り組んだ。フィンランドとスウェーデンのNATO加盟では、難色を示すトルコやハンガリーの説得に当たった。
また、ロシアに接近する中国を警戒。岸田文雄首相が唱える「欧州大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分」との認識を共有し、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国首脳を3年連続でNATO首脳会議に招待した。日本とは7月、情報共有のための専用通信回線の新設で合意している。
加盟国からの信頼は厚く、4回にわたり任期を延長した。バイデン米大統領は7月、「危機に際しても冷静で、政治的な立場を超えて指導者たちと協力し、前進する方法を常に見つける人物だ」と評価し、文民最高位の勲章を授与した。
ただ、11月の米大統領選でウクライナ支援に消極的なトランプ前大統領が返り咲けば、加盟国の結束が揺らぐとの懸念もくすぶる。NATOは7月の首脳会議で、25年末までの支援額を決定。武器供与や軍事訓練に関するNATOの調整機能も強化するなど、備えを急いでいる。
欧州の加盟国でも「ウクライナ支援疲れ」を背景に、自国優先を掲げる極右勢力が選挙で伸長。ストルテンベルグ氏は9月のイベントで、職務を通じて得た最も重要な教訓として「孤立主義は誰の安全も守れない」と強調した。後を託されたオランダのルッテ前首相には就任早々、同盟の結束維持という重責がのしかかる。
[時事通信社]
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