混戦で光った「阿部采配」=投手陣立て直し、巨人復権―プロ野球
昨季は2年連続Bクラスに沈んだ巨人。創立90年の歴史を持つ伝統球団に、これ以上の低迷は許されなかった。復権を託された阿部監督は春季キャンプ初日、選手らに向かって檄(げき)を飛ばした。「みんなの力を出せば絶対に勝てる。やってやろうじゃねえか」
新指揮官の下、コーチ陣も若返って迎えた転換期。課題だった投手陣の整備を急ぎ、高橋礼や泉、ケラーらを獲得。実績のある高梨や2年目の船迫、抑えの大勢も計算ができ、数はそろった。
あとは、選手の実力をいかに発揮させるか。監督が示した方針は「四球を減らす」こと。そのために「困ったらど真ん中に投げろ」。打たれることや四球を気にするあまり、かえって制球を乱すことがある。だからあえて大胆な意識付けをすることで、不安を軽減させようとした。
結果、シーズンを通して投手陣の奮闘は目覚ましいものがあった。5月に無安打無得点試合を達成した戸郷、前半戦だけで8勝を挙げて復活した菅野、そして山崎伊が先発の柱として活躍。5年目の井上も思い切りの良さが出てローテーションの一角に成長し、「ストライクゾーン内で、ある程度抑えられる感覚が出てきた」と実感する。
救援陣も安定。大型連敗は交流戦で喫した6連敗くらいで、悪い流れを長く引きずることはなかった。前半戦を貯金8の首位で終えると、監督は「ここから開幕だと思って貯金を増やしていく」と改めてチームを引き締めた。
混戦となった終盤には勝負手も決まった。戸郷、菅野は上位の阪神、広島にぶつけるため、時には中4日で起用。今月10日からの広島との首位攻防3連戦では、12日に抑えの大勢を回またぎで使うなどして3連勝。首位争いで一歩抜け出し、18日に優勝マジック9を点灯させると、ここでも「浮かれるのはマジック1で」と気の緩みがないよう意思統一を図った。
監督としては若い45歳。熱い闘志を隠さず、理論より心の力を強調することもある。「きょうも泥まみれになってやるぞ」。冷静な采配に加え、勝利への執念もにじませて陣頭に立ち、4年ぶり39度目のリーグ制覇。強い巨人がよみがえった。
[時事通信社]
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