ハマス越境攻撃のトラウマ=境界からのヒズボラ撤収訴え―避難長引くイスラエル北部住民
【エルサレム時事】イスラエル北部では昨年10月以降、イスラエルと境界を接するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの交戦が続き、6万人以上の住民が避難を余儀なくされている。パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲は、「同じことが起こり得る」と北部住民に具体的な脅威として刻み込まれた。住民は境界地帯からのヒズボラの撤退を求めており、ヒズボラへの攻撃を強めるイスラエル軍は「住民の安全な帰還」を目標に掲げる。
レバノンとの境界から約2キロの町キリヤット・シュモナの住民、70代のローラ・リフシェツさんは、エルサレムを訪れていた際にガザでの衝突が始まった。ハマスに「連帯」を示すヒズボラは対イスラエル攻撃を開始。自宅に突然帰れなくなり、以降、エルサレムの親族宅に身を寄せる。
イスラエルとヒズボラの衝突で避難したことは以前もあったが、「これほど長期化するとは」とうつむいた。自宅はヒズボラの攻撃で破壊された。美しい自然や友人、遊ぶ子供たちの姿が脳裏に浮かび、心が沈む。高齢者センターで絵付けの作業をしている時だけ、暗い気持ちから逃れられるという。
自宅に戻りたいが、「ハマスが行ったように、テロリストが国境を越えて町に来るのが怖い」。境界地帯からのヒズボラ排除を訴えた。
北部のキブツ(集団農場)のマツバで暮らしていたソフトウエア・エンジニアのリオル・アロンさん(48)は、家族と共に避難先を転々としたが、10代の子供のことを思い、できるだけ日常に近い生活を送れる北部の町に家を借りた。ただ、避難生活は落ち着かず、マツバに通って自宅のシェルターで仕事を続けている。
昨年10月、ハマスによるイスラエル南部への奇襲の一報を受けた時には、北部も「時間の問題だ」と緊張が走った。境界に近い畑で作業する農民に対し、国を隔てるフェンスの向こうでヒズボラ構成員が首を切り落とすジェスチャーをして見せることが常となっていた。
「もう1発のロケット弾も受け入れられない」とアロンさん。住民帰還の条件は、やはり境界地帯からのヒズボラ撤収だと語った。
[時事通信社]
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