消極的支持と心せよ=自民総裁選
派閥裏金事件の逆風が収まらない中、異例の9候補が乱立した自民党総裁選は、よりましな候補を選ぶ「コンテスト」の様相を呈した。結果はある意味無難な選択と言えよう。第102代首相に選出される石破茂新総裁は、「裏金」で失った政治への信頼回復という重責を担う。
岸田文雄首相の不出馬表明で口火が切られた総裁選。衆目の一致する「ポスト岸田」候補不在の中、石破氏が半ば消去法で選ばれた。かねて「党内野党」のレッテルを貼られ、時の政権に批判的な発言を重ねてきた経歴が、危機的状況に陥る党内で一定の支持を得たのだろう。
総裁選は高市早苗経済安全保障担当相、小泉進次郎元環境相との三つどもえの争いとなった。論戦が進むにつれ、人気先行の小泉氏は経験不足を露呈し失速。決選投票では、強い保守色がむしろ危うさと感じられた高市氏と比べ、石破氏がよりましだと評価されたにすぎない。苦戦が予想される次期衆院選で結果を出せなければ、再び看板の掛け替えを求める声が強まろう。
今回の総裁選は岸田首相の派閥解消宣言を受け、麻生派以外の5派閥が解散を決めた中で行われた。派閥なき総裁選のありようが問われたが、旧来の派閥を軸とした合従連衡の動きが最終盤で顕在化。派閥解消は「裏金」の醜聞から世間の耳目をそらせる狙いだったのかと疑いたくなる。
石破氏は今後、党改革はもちろん内政外交の難題に取り組むことになる。人付き合いが苦手で徒党を組むことを好まないとされ、党内基盤が脆弱(ぜいじゃく)なだけに不安も残る。直ちに取りかかる党執行部と閣僚の人事が試金石となるが、総裁選候補者らを寄せ集めた「ドリームチーム」(岸田首相)で切り抜けられる局面でないのは明らかだ。
[時事通信社]
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