決選投票へ駆け引き活発=「3強」候補、重鎮に秋波―自民総裁選
27日に投開票が迫る自民党総裁選で、決選投票をにらんだ駆け引きが激しくなってきた。石破茂元幹事長(67)、高市早苗経済安全保障担当相(63)、小泉進次郎元環境相(43)のうち2人が決選投票に進むとみられ、3陣営が旧派閥の領袖(りょうしゅう)らに秋波を送るなど、多数派工作が活発化。なりふり構わず「派閥の論理」に擦り寄るような対応は、党の「刷新」が程遠いことも浮き彫りにしている。
「岸田政権の取り組んできたことを引き継ぎ、実現が早まるべく努力したい」。石破氏は25日、経済政策に関する記者会見を開いた。真っ先に挙げたのは「物価上昇を上回る賃上げ」など岸田文雄首相が掲げてきた政策だった。
その首相は訪問先の米ニューヨークで23日(日本時間24日)、総裁選への対応について「私の内閣で進めた政策を引き継ぎ、発展させる方」を見極めると強調した。石破氏の発言が、決選投票を見据え、首相が率いた40人規模の旧岸田派票に向けられていることは明白だ。
1回目の投票は国会議員票と地方票の割合が一対一の計736票で争われるのに対し、決選投票は国会議員票368票、地方票47票と、議員票が一気に重みを増す。混戦を勝ち抜くため、9候補に分散する議員票を、決選投票で引き寄せたい心理が働く。
「抱き付き」戦術に打って出たのは小泉氏だ。麻生派(54人)を率いる麻生太郎副総裁や、旧安倍派の参院議員への影響力を今も持つ世耕弘成前参院幹事長と24日から相次いで会談した。
小泉氏の後ろ盾である菅義偉前首相は、麻生氏と距離を置く。世耕氏は派閥裏金事件の責任を問われて離党した。小泉氏は25日、記者団から狙いを問われると「有力者イコール改革派でない、というのは全く違う。直接支援をお願いするのは当然のことだ」と正当化した。
高市氏も先週末に参院実力者の石井準一参院国対委員長に支持を要請した。25日には陣営幹部の中曽根弘文元外相が麻生氏と会談。陣営は小林鷹之前経済安保担当相(49)を支える保守系議員らに電話し、働き掛けを強めている。
ただ、有力者の意向がどこまで投票結果につながるかは見通せない。石破氏を支持する遠藤利明前総務会長は25日夕、首相と約30分にわたり首相官邸で意見交換。関係者によると、首相はなお迷いをにじませた。麻生派内も各陣営に支持がばらけており、同派幹部は分裂を懸念し「決選投票で指示を出さない方が派にとっていいかもしれない」と語る。
多くの候補は裏金事件の逆風を意識し、「脱派閥」を主張していたが、最終盤では「派閥」に頼る動きが加速する。旧安倍派議員20人超は25日、衆院議員宿舎に集まり、会合では「裏金事件を引き延ばさない候補がいい」との声が上がった。
「全然刷新感がない。これでは逆効果だ」。ある中堅議員はこう漏らした。
※おことわり
自民党派閥で解散せず継続方針を表明している麻生派以外の5派の呼称は、「旧安倍派」「旧茂木派」「旧岸田派」「旧二階派」「旧森山派」とします。
[時事通信社]
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