岸田首相「同志国重視」アピール=退陣直前の訪米、路線継承図る
【ウィルミントン時事】岸田文雄首相が退陣直前という異例のタイミングで米国を訪れ、日米豪印首脳会議に臨んだのは、同盟・同志国を重視する姿勢をアピールするためだ。得意と自負する首脳外交の「集大成」として、次期政権への継承を図る思惑が透ける。ただ、日米両国でリーダーの交代が決まっており、先行きには不透明感も漂う。
「在任中、日米豪印の取り組みを一貫して重視してきた。首相として最後の外国出張において参加するに最もふさわしい会合だ」。首相は21日(日本時間22日)の会議冒頭でこう強調した。
首相が日米豪印首脳会議に出席するのはオンラインも含め4回目。2021年の就任以降、強固な日米関係をてこに、同盟・同志国のネットワーク拡大に腐心してきた。覇権主義的な動きを強める中国と対峙(たいじ)するためには、インド太平洋地域で米国の関与が欠かせないとの判断からだ。
その土台を築くため、首相は日米同盟の強化に注力した。安全保障面で日本側の役割拡大を求める米側の意向を踏まえ、防衛費増額のための増税を決断。自衛隊と米軍の指揮統制の連携向上も図った。
首相は今回、米デラウェア州ウィルミントンにあるバイデン米大統領の私邸に招かれた。直接の出迎えを受け、和やかな雰囲気で首脳会談がスタート。バイデン氏は3年間の「岸田外交」を称賛したという。外務省幹部は「日米関係は『黄金時代』にある。多くのことが成し遂げられた」と両首脳の個人的な信頼関係を振り返った。
首相は10月1日に退陣する見通し。自民党総裁選(9月27日投開票)の9候補のうち、岸田政権の外交路線を着実に継承するのは誰か、慎重に見極める構えだ。訪米に先立ち、記者団から支持候補を問われ「最後まで政策、考え方をしっかり聞いた上で判断したい」と語った。
11月の米大統領選の行方は今後の懸念材料だ。ハリス副大統領が勝利すればバイデン政権の外交路線が踏襲されるとみられる一方、トランプ前大統領が返り咲けば「日米の不確実性が高まる」(外務省関係者)との見方が根強い。
「政権が代われば、政策が変わることはある」。結果次第で日米関係が揺らぎかねず、政府関係者はこう不安を口にした。
[時事通信社]
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