3重鎮、影響力維持へ腐心=派閥解消で「勝ち馬」読めず―自民総裁選
大混戦の自民党総裁選(27日投開票)で、岸田文雄首相、麻生太郎副総裁、菅義偉前首相が「勝ち馬」探しに腐心している。キングメーカーとして新政権で影響力を行使しようとの狙いだが、派閥解消で予測不能な上、配下の議員が指示通りに動くかも見通せない。決選投票が確実視される中、3重鎮らには焦りの色が浮かぶ。
「菅氏が小泉進次郎元環境相(43)を支援するのだけは分かっているんだが」。18日、関係者にこう漏らした首相は、読み切れない総裁選にいら立ちをにじませた。
小泉氏に対する菅氏の入れ込みぶりは明らかだ。菅、小泉両氏のお膝元・神奈川の地方議員は12日の告示後、「党員名簿を渡され、架電状況などを菅事務所に毎日報告している」と明かした。
2021年の前回総裁選で再選を目指していた菅氏は、首相に機先を制され、不出馬に追い込まれた。以前から首相に批判的だった菅氏にとって、「今回はリベンジマッチ」(自民関係者)と見る向きは多い。
「小泉氏は人気先行だ。国会審議で行き詰まりかねない」。麻生氏は周囲にこう語る。唯一存続を決めた麻生派だが、所属する河野太郎デジタル相(61)以外に上川陽子外相(71)ら複数の陣営に支持が分かれ足並みはそろわない。菅氏に近く小泉陣営の武田良太元総務相らとは地元福岡で対立関係にあるほか、石破茂元幹事長(67)とも依然として溝が横たわっており、「こんな総裁選は経験がない」と周囲に漏らす。
世論調査で上位の小泉、石破両氏のいずれにも距離を置く麻生氏が視線を注ぐ先は高市早苗経済安全保障担当相(63)だ。党員支持で勢いを得ているとされ、決選投票に向けた議員票の多数派工作も「当然している」と陣営幹部は語る。
高市氏が送付した政策文書問題で、河野陣営は抗議文を出さない対応を決定したが、閣僚経験者は「麻生氏が決選投票で派として高市氏を支持する布石を打ったのでは」との見方を示す。
首相も連日、岸田派議員を通じて情勢の把握に努める。事実上の退陣表明後、派閥ベテランに「政治家を辞めるわけじゃない」と語った首相にとって、今回の総裁選は影響力を残せるかどうかの試金石となる。側近の木原誠二幹事長代理らは小泉陣営入りし、気脈を通じる遠藤利明前総務会長は石破氏の後ろ盾となっているが、「1、2番手が見えない」と周囲に戸惑いを示す。
「最後は方針を示さないといけねえな」。4日、山梨県で開かれた岸田派有志の会合で、首相は参加者らにこう予告したが、同派関係者は「方針通り動くのは十数人いるかどうか」と語った。
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