通信機器に爆薬混入か=察知恐れ爆破急いだ可能性も―レバノン爆発、真相巡り臆測
【イスタンブール時事】レバノン各地で起きたポケットベル型通信機器の連続爆発を巡り、臆測が広がっている。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、イスラエルが敵対するイスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘員らを狙った可能性を指摘。数十グラム程度の爆薬と起爆装置が端末に仕込まれ、ヒズボラ指導部からを装うメッセージを受信すると起爆する仕組みだったと報じた。
レバノンやイラクなどの政府は、イスラエルによる「サイバー攻撃」だと非難したが、イスラエルは公式に関与を認めておらず、真相は不明だ。ヒズボラは「専門機関が原因究明に向け調査を実施する」としている。
米ネットメディア「アクシオス」によると、イスラエル側はヒズボラとの全面衝突の際に機先を制して打撃を与えるため、戦闘員らの通信機器の爆破を計画。しかし、ヒズボラ側で機器を不審に思う動きが浮上したため、計画察知を恐れて爆破を急いだと報じた。
機器に内蔵されたバッテリーがハッキングで異常高温になり、爆発したとの見方も伝えられたが、SNSなどには、通信機器が特に目立った前触れもなくさく裂したように見える動画も、多数投稿された。米CNNテレビによれば、元米情報機関当局者は「遠隔のハッキングで機器に過剰な負荷をかけバッテリーを爆発させたにしては、規模が大きすぎる」と指摘する。
一方、英BBC放送(同)は元英陸軍専門家の話として、通信機器が製造・供給される過程で、電子部品の一部として高性能爆薬が端末内部に混入された可能性があると伝えた。
ヒズボラはイスラエルによる通信傍受や要人暗殺を避けるため、数年前から戦闘員らが携帯電話やインターネットを利用するのを制限してきたとされる。ロイター通信は今回爆発した機器について、台湾企業が製造し、ヒズボラが過去数カ月に調達した最新式のものだと報じた。
イスラエルは7月にイランで、イスラム組織ハマス最高指導者だったハニヤ氏の暗殺に関与したとされる。イラン側は否定するものの、米メディアは同氏が宿泊する施設へ数カ月前に爆発物が持ち込まれ、イラン国内の協力者らを使った周到な準備を経て殺害されたと報じた。綿密で大胆な手口という点で今回の爆発も酷似しており、中東の安全保障専門家は、衛星テレビ局アルジャジーラに「ヒズボラへの心理的影響は甚大だ」と話している。
[時事通信社]
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