「何度も来たくなる場所に」=被災ゲストハウスを再開―能登町の田村さん・石川
石川県能登町の山あいにある古民家でミラーボールが回る。田村早苗さん(35)が経営するゲストハウス「土とDISCO」の風景だ。1月の能登半島地震では建物が傾き、ひびも入ったが、修繕して3カ月後に営業を再開。田村さんは「被災をバネに、何度も来たくなる、人と人の関係をここでつくりたい」と前を向く。
金沢市出身の田村さんはヒップホップダンスが好きで、同志社大(京都市)に在学中から欧米の大会にも出場した。卒業後は東京でIT系のベンチャー企業に就職したが仕事が合わずにやめた。海外放浪中に温めていたゲストハウス経営の夢実現に向け、東京で管理人の経験を積み、開業資金をためるために飲食店にも勤務した。
そして2021年9月、能登町の築120年の古民家と「東京ドーム1個分ほど」(田村さん)の土地を購入。新型コロナウイルス流行に伴いリモートワークになった夫と長男を連れ、自然豊かな能登町に移り住んだ。
古民家を改修し、念願だったゲストハウスを開業したのは昨年4月。宿の名前は、自然や土着の文化を楽しんでもらい、多くの人たちの社交場になってほしいとの願いを込め名付けた。母から教わった料理の腕を生かし、自ら採った山菜などを使った住民向けのカフェも始めた。それらが軌道に乗り始めた時に地震が起きた。
発生時は金沢市の実家にいた田村さん。家族で東京に2カ月ほど避難し、能登町に戻った。「一緒に頑張りたい人がいるから、やめる選択肢はなかった」。宿の傾きを機械で直し、水道が復旧した4月に営業を再開した。
宿泊客にはボランティアで同町を訪れた人も多く、被災した裏山の整備を手伝ってもらったこともあるが、「田舎に遊びに来た感覚」で滞在してもらうことを心掛けている。そして夜には、ディスコパーティーを開いて、一緒に飲んだり食べたりして交流することも。田村さんは「来た人と友達になりたいから」と話す。
今回の地震では、傷ついた地域を立て直そうとする人や、地域を助けたいと外から来る人など、人と人のつながりが大事だと強く再認識した。「みんながわいわいする場があれば、地域の人が残り、都会の人が来る」。
[時事通信社]
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