米政府、M&Aに厳しい視線=独占防止、消費者保護に重点―合意破談も
【ニューヨーク時事】バイデン米政権が、大企業のM&A(合併・買収)に厳しい視線を注いでいる。企業の市場独占を防ぎ、消費者や労働者を保護するのが狙い。企業間で合意した買収計画が破談に追い込まれた事例もあり、政権の姿勢が波紋を呼んでいる。
米メディアによると、2021年10月~22年9月の1年間に米連邦取引委員会(FTC)などが買収阻止を目的に、提訴を含む異議申し立てを行った件数は50件と、過去最多に上った。当局の対応に「企業の思わぬコスト負担が増える」(専門家)との批判が広がる。
今年3月には、米格安航空大手ジェットブルー・エアウェイズが同業スピリット航空の買収を断念した。連邦地裁は統合により競争を阻み、運賃が上昇すると判断。提訴した司法省の主張を支持した。スピリットの経営状況は苦しいままで、成長戦略を描けない状態が続く。
バイデン氏退任後も、大企業のM&Aにメスを入れる体制が続くとの観測が浮上する。同氏の後継として大統領選に挑む民主党のハリス副大統領も現政権の路線を引き継ぐとみられる。共和党は本来企業寄りの立場だが、副大統領候補のバンス氏は、巨大企業の市場独占に強硬な姿勢を取るFTCのカーン委員長を称賛。米ブルームバーグ通信は、トランプ政権が誕生した場合、想定以上にM&Aの審査が厳しくなるとの見方を紹介した。
米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測を背景に長期金利が低下し、資金の調達環境が改善に向かう中、「M&Aの動きは加速している」(米金融大手首脳)。ただ、当局が厳しい姿勢を貫けば、大企業が投資を手控えてM&Aの機運が弱まるとの見方もくすぶる。
[時事通信社]
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