能登被災地、進む事業再開=復興需要けん引、先行き不安も―地震8カ月
能登半島地震から1日で8カ月を迎え、被災地で事業再開の動きが広がっている。復旧・復興に伴う需要増や仮設住宅への入居で地元住民が戻ってきていることが背景にある。ただ、時短営業や仮設店舗など事業を縮小した形での再開も目立ち、本格再建は遠い。
珠洲市商工会議所が会員企業533社を対象に調べたところ、6月上旬時点で40%だった事業再開率が、8月中旬に61%まで回復した。復興に不可欠な土木・建築を含む工業、住民に身近な理容・医療などサービス業で再開が進む。
興能信用金庫(石川県能登町)が奥能登2市2町の取引先について行った調査でも、672社のうち7月末時点で営業再開が86%に上った。担当者は「復興需要、仮設住宅入居、水道復旧などが相乗効果となって増えている」と分析する。
珠洲市内にある炉端焼き店「あさ井」は、連日のように満席の日が続いている。ただ、人手不足で閉店時間を1時間早い夜9時に早めた。地震前に店をにぎわせた地元客もまだ少ない。
店主の浅井誠さん(49)は「珠洲の人がまた外に出て飲食を楽しむきっかけにしたい」と街の再生に意気込むが、どれだけの客が戻るか不安もあるという。「復興需要が続いている間に、その後も店を維持できる仕組みを考えなければならない」と話す。
珠洲市商議所会頭の刀祢秀一さん(72)は、被災地の事業環境について「緩やかに減ってきた人口が、震災で一気に減る。一念発起して再開しても、人が来なければ話にならない」と厳しさを指摘する。5割を超える同市の高齢化率にも触れ、「再建しようにもローンも組めず、どこを向いても難しい問題ばかりだ」と語る。
特に宿泊を含む観光業は設備損傷や観光収入が途絶えたことで苦境が続き、珠洲市での再開は4割にとどまる。宿泊施設「ランプの宿」を営む刀祢さんは、地震による海底隆起など能登半島の地形変化を観光資源化できないか、県や旅行会社を巻き込んで新たな誘客策を探っている。
[時事通信社]
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