反撃能力の「目」、衛星網整備=長射程ミサイル配備本格化―防衛費、過去最大の8.5兆円・概算要求
防衛省は30日、2025年度予算の概算要求を発表した。総額は過去最大の8兆5389億円。中国や北朝鮮の軍備強化をにらんだ反撃能力(敵基地攻撃能力)整備のため、多数の小型衛星で標的を追尾する「衛星コンステレーション」構築に3232億円を計上。長射程ミサイル配備も本格化させ、遠方の目標を攻撃する能力の具体化を進める。
当初は8兆4989億円とする方針だったが、400億円増額した。政府は防衛力強化のため23~27年度に計43兆円の防衛費を費やし、最終年度は8兆9000億円とする計画。
敵の射程外から攻撃する「スタンド・オフ防衛能力」に9700億円を充てた。衛星コンステレーションは、同一軌道上に多数の小型画像衛星を並べ、継続的に目標を探知・追尾する反撃能力の「目」となる。6年間の計画で民間に委託。25年度に打ち上げを始め、27年度から運用を開始する見通しだ。
長射程ミサイルは、射程を延ばした国産の地上発射型「12式地対艦誘導弾」と米国製巡航ミサイル「トマホーク」の配備を開始。発射装置の整備などにそれぞれ180億円、18億円を積んだ。
無人装備品導入に1032億円を確保。自爆して車両などを撃破する小型の攻撃用無人機や、長時間滞空可能な警戒監視用無人機の取得を進める。
重要なシステム強化も推進。ミサイル防衛など防空の要となる航空自衛隊の「自動警戒管制システム(JADGE)」について、各航空方面隊の司令部にある防空指令所以外でも運用可能な「次世代JADGE」に改修する。機能の存続性向上のためで、整備費は126億円。陸海空各自衛隊のシステムを一本化する「防衛省クラウド」構築に965億円を盛り込んだ。
急務の人材確保では、給与・手当の見直しや募集態勢の強化を進める。駐屯地警備に遠隔監視システムを導入して全国で1日当たり1000人規模の省人化を目指すとし、180億円を措置した。
空自の航空宇宙自衛隊への改編を見据え、宇宙監視を担う「宇宙作戦団」を新設。海上自衛隊の電子戦やサイバー戦能力を一元化する「情報作戦集団」も創設する。
◇防衛省概算要求の主な内容
【反撃能力】
衛星コンステレーション構築 3232億円
地上発射型「12式地対艦誘導弾」配備開始 180億円
米国製巡航ミサイル「トマホーク」配備開始 18億円
【無人装備品】
滞空型無人機取得 ―
小型攻撃用無人機取得 30億円
【システム整備】
「次世代自動警戒管制システム(JADGE)」整備 126億円
防衛省クラウド整備 965億円
駐屯地遠隔監視システム導入 180億円
【組織改編】
航空自衛隊に「宇宙作戦団」創設
海上自衛隊に「情報作戦集団」創設
(注)滞空型無人機は機種選定中のため金額は非公表
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