処理水放出、埋まらぬ溝=対中国、WTOに活路―政府
東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出から24日で1年。日本産水産物の輸入停止を続ける中国に対し、日本政府は2国間協議や国際会議などで安全性を訴え、即時撤廃を求めているが、溝は埋まらない。漁業者らへの影響が長引く中、世界貿易機関(WTO)を通じた解決に活路を見いだす考えだ。
中国は昨年8月、処理水放出に反発し、即座に日本産水産物を全面的に禁輸した。日本は「中国の措置は科学的根拠に基づかない」と主張。食品の安全確保に関するWTOの衛生植物検疫措置(SPS)委員会などで反論を続けてきた。
しかし、昨年11月以降3度にわたり開かれたSPS委員会では、「主張がかみ合わない」(交渉関係者)状況。日中の議論は平行線をたどっている。
解決の糸口として期待が高まっているのが、WTO有志国による新たな紛争解決制度。機能不全に陥っている従来の仕組みに代わり、暫定的に採用されている「多数国間暫定上訴仲裁アレンジメント(MPIA)」と呼ばれる枠組みで、有志国の紛争を仲裁で解決することを目的としている。
MPIAには54カ国・地域が参加し、日本や中国、香港も含まれる。処理水の海洋放出については、国際原子力機関(IAEA)も「国際的な安全基準に合致している」と結論付けており、日本が提訴すれば「日本の主張は認められる」(同)との見方が強い。
日中関係のさらなる悪化や中国による報復措置などにつながる懸念もあるが、こう着状態が続けば、販売減に苦しむ漁業関係者らの負担も一段と膨らむ。斎藤健経済産業相は「問題解決に向けた協議のプロセスを加速していく」と話している。
[時事通信社]
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