今こそ途上国支援拡大を=内戦経験のボスニア、援助国に呼び掛け
【ワシントン時事】コロナ禍以降、地政学的対立の激化や気候変動問題の深刻化など、途上国が相次ぐ危機に直面している。先進国の「援助疲れ」も懸念される中、内戦から復興し、今や援助する側に回った東欧ボスニア・ヘルツェゴビナのハサノビッチ財務副大臣はこのほど、時事通信の取材に応じ、日米など主要援助国に対し、今こそ支援を増やす時だと呼び掛けた。
1992~95年のボスニア内戦は、イスラム教徒の集団虐殺事件が起きるなど「第2次世界大戦後の欧州における最悪の内戦」とも言われる。戦後、世界銀行グループで最貧国支援を担う国際開発協会(IDA)などの融資を受けつつ、民族対立を乗り越えて復興を果たし、2023年にIDAへの資金拠出を表明した。IDAの資金は、世界遺産である同国南部モスタルの石造橋「スタリ・モスト(古橋)」再建にも活用された。
ハサノビッチ氏は「国全体が破壊されたが、インフラや公共サービスの再建でIDAが重要な役割を果たした」と評価。ロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスの戦闘激化など、世界は現在も多くの危機に直面しているとし、「支援の用意が求められる」と述べた。
ボスニアはIDAへ26年までに300万ドル(約4億4000万円)を拠出することを決定済み。ハサノビッチ氏は「それ以降も支援をやめない」と明言した。同国は人口約320万人の小国で、1人当たりの国内総生産(GDP)は約8400ドル(約124万円)。拠出額は多くはないが、世銀ディレクターのディルク・ライナーマン氏は「少額であっても、非常に重要な象徴的拠出だ」と歓迎する。
IDAの増資交渉は12月の最終協議に向け、佳境を迎えつつある。ただ、米国は11月の大統領選を控えて「内向き」姿勢が懸念され、日本も歴史的な円安でドル建て資金拠出の負担増に見舞われている。主要国がこうした事情を抱える中で、ハサノビッチ氏は「IDAには一層多くの資金が必要だ」と訴えた。
[時事通信社]
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