新兵頼み、ロシア弱点突かれる=ウクライナ攻撃で捕虜数百人
ウクライナ軍の越境攻撃でロシア軍の即戦力不足が露呈した。ウクライナのゼレンスキー大統領は13日、ロシア西部クルスク州で捕虜として敵の「数百人が投降した」と発表。義務で兵役に服し、経験のない新兵が含まれる。電撃作戦は極秘に準備され、ロシアは弱点を突かれた。
◇精鋭部隊おらず
プーチン政権は、侵攻を続けるウクライナに新兵を送らないと説明してきた。ウクライナの激戦地に精鋭部隊を集中させると同時に、ロシア本土なら国境地帯に新兵を配置できるという論理だったとみられる。
独立系メディアによると、6日の越境攻撃開始時、クルスク州には新兵が数百人おり、多くが行方不明か捕虜となった。兵役中の19歳の孫と電話連絡が取れなくなったという女性は「国境から約500メートルに張り付けられていた。武器も持たされず、スコップで戦えというのか」と憤りをあらわにした。
ウクライナ軍が国境地帯を制圧後、ロシア軍は新兵を撤退させず、逆に各地から集めているとの情報がある。北西部ムルマンスク州で兵役中の若者は9日、母親に「クルスク州に送られる」と電話。母親が軍に問いただすと「上層部の命令だ」と告げられた。
予備役の動員を2022年の1度しか行わなかったロシアは、即戦力の補充を志願兵に頼ってきたが、中央・地方政府は最近、入隊時の一時金を増額した。志願兵が集まりにくくなったことが背景にあり、新兵「活用」と併せて兵員不足を浮き彫りにしている。米ブルームバーグ通信は関係者の情報として、年末に追加動員のシナリオもあると伝えている。
◇社会に動揺も
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が現場のウクライナ軍関係者の話として報じたところでは、越境攻撃は秘密が徹底された。将校は3日前、兵士は前日に初めて知らされたという。事前に情報が漏れ、作戦の足を引っ張った昨年の反転攻勢とは対照的だった。
シルスキー総司令官がクルスク州で制圧したと主張する「約1000平方キロ」に関し、ウクライナ外務省報道官は13日、占領自体に「関心はない」と説明。ゼレンスキー氏は9日時点で、捕虜交換の元手となるロシア兵の獲得が「極めて重要」と訴えた。
プーチン大統領はウクライナ軍を撃退するよう厳命しており、第2次大戦後初とも言われるロシア領喪失の衝撃は大きい。自分の意志によらない兵役で20歳前後の若者が戦争に巻き込まれたことにロシア社会は動揺しており、厭戦(えんせん)ムードが高まる可能性もありそうだ。
[時事通信社]
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