タクシン氏・保守派の対立再燃=革新系排除で連立維持か―タイ
【バンコク時事】タイ憲法裁判所による判断でセター首相が失職したことで、タイ政治の不安定さが改めて印象付けられた。背景には、与党タイ貢献党の実質的なオーナー、タクシン元首相と軍など保守派の対立が再燃したことがある。ただ、タクシン氏と保守派は革新系政党を排除することでは利害が一致しており、連立政権の大枠は維持されるという見方がある。
タクシン派は2006年と14年のクーデターで政権を倒され、これまで反軍を掲げてきた。しかし、昨年9月に親軍政党などと手を組んでセター氏を首相とする連立政権を発足させた。
海外逃亡生活を送っていたタクシン氏は昨年8月に15年ぶりに帰国し禁錮8年の実刑判決を受けたものの、国王の恩赦で1年に減刑された。外交筋は「タクシン氏への恩赦の見返りに軍と和解し、親軍政党と連立を組む『密約』があったようだ」と指摘する。
タクシン氏は帰国時、政治とは距離を置く姿勢を示したが、今年2月に仮釈放された後は活動を活発化。保守派はタクシン氏の影響力拡大に警戒を強め、5月に軍を支持する当時の上院議員40人が憲法裁にセター氏の失職を申し立てるなど対決姿勢を示した。
一方で、タクシン氏と保守派には、昨年5月の総選挙で王室や軍の改革を公約に掲げて躍進した革新系の最大野党・前進党(今月7日に解党処分)の後継・国民党という「共通の敵」がいる。タイ政治の専門家は「保守派は国民党の政策を許容できず、タクシン派にとっても同党は有権者の支持を奪い合うライバルだ。保守派とタクシン派は手を組み続ける方が得策だと判断しているだろう」と指摘した。
[時事通信社]
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