暫定政権が船出、分断修復目指す=ハシナ体制崩壊1週間―バングラデシュ
【ニューデリー時事】バングラデシュで反政府デモ激化を受けてハシナ政権が倒れてから12日で1週間。社会の動揺が収まらない中、ノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス氏をトップとする暫定政権が船出した。同氏は知名度は抜群だが政治経験はなく、行政手腕は全くの未知数。困難な局面で国民の分断修復と、今後総選挙を経て誕生する新政権への円滑な権力移行が求められている。
◇45分前に決断
急転直下だった。5日、全国で抗議活動を行っていた多数のデモ隊がハシナ首相の辞任を求め、首都ダッカの首相公邸に押し寄せようとしていた。地元報道によると、警察幹部は「もはや警察でも持ちこたえられない」とハシナ氏に説明。同氏はいったんは辞任を拒んだが、最終的にデモ隊到着の約45分前に了承。ヘリコプターで隣国インドに脱出し、約15年続いた政権はあっけなく崩壊した。
ハシナ氏は経済を高成長に導いた一方、反体制派を次々に拘束。独裁的な手法に不満が高まっていた。デモのきっかけとなった公務員採用の優遇措置は失業に苦しむ若者にとって受け入れ難く、治安部隊が実弾を用いてデモ鎮圧を図ったことで先鋭化した。
◇党派性排し団結に重点
8日発足した暫定政権にはデモを呼び掛けた学生団体リーダーも名を連ねた一方、政党の指導者は含まれていない。党派性を排し、団結を示すことに重点が置かれたとみられる。首席顧問に就いたユヌス氏は貧困層向けの無担保少額融資を手掛ける「グラミン銀行」の創設者。同銀行と共に2006年にノーベル平和賞を授与された。
ジャハンギルナガル大学のアル・マスード・ハサヌザマン教授(政治学)はユヌス氏に関し、「尊敬され、新鮮で信頼できる選択肢と見なされている。重大な難局に直面しているが、ユヌス氏の国際的なコネクションは活用すべき利点だ」と指摘する。
ただ、国内で少数派のヒンズー教徒への襲撃が相次いでいる他、ハシナ前政権下で任命された政府機関幹部らの辞任が続くなど暫定政権発足後も混乱は続いている。ユヌス氏は10日、大学での集会で「誰も(少数派に)危害を加えることはできない」と語り、暴力行為をやめるよう訴えた。
国外に逃れたハシナ氏の最終目的地はロンドンとみられていたが、英国は亡命に難色を示しているとされる。インドにとっては、同氏の滞在が長引けばバングラデシュとの関係がこじれかねず、その扱いが懸案となっている。バングラデシュは地政学的な要衝にあり、中国も浸透を狙う。最大の2国間援助国である日本も情勢を注視している。
[時事通信社]
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