父との約束、胸に舞台へ=銀メダル、112年で初―近代五種・佐藤選手〔五輪〕
近代五種男子で銀メダルを勝ち取った佐藤大宗選手(30)=自衛隊。水泳と少林寺拳法に明け暮れたスポーツ少年は社会人になって近代五種を始めた。くじけそうになった時に励ましてくれ、今は病床にいる父との約束を胸に大舞台に挑み、112年の歴史で日本勢初のメダルを獲得した。
近代五種はフェンシング、水泳、馬術に、射撃とランを組み合わせた種目の総合力を競う。男子は1912年ストックホルム大会から実施されているが、日本人メダリストは誕生していなかった。
佐藤選手は4歳で水泳を始め、小1の時、少林寺拳法の道場に通い始めた。「水難事故に遭わなくなる」「礼儀作法が身に付く」。いずれも父勇蔵さん(70)の勧めがきっかけだった。中2まで少林寺拳法を続け、青森山田中・高校では水泳部に所属した。
近代五種と出合ったのは海上自衛隊に入隊して1年目。体力測定の水泳で好成績を収めたことが近代五種OBの教官の目に留まった。「何も知らなかったが、面白そうと思った」と始めた動機を語る。
競技を始めて約10年がたった昨年秋の全日本選手権で、佐藤選手は初めて家族を大会に招待した。それまでは「招待するまで待っていて」と伝え、成績が振るわず「やめたい」と漏らしたこともあった。「やるからにはぼろぼろになるまで、死ぬ気でやってこい」。勇蔵さんにそう活を入れられた。
家族が見守る中、優勝した全日本選手権。母薫さん(57)は、馬を手なずける様子や少林寺拳法の動きが見え隠れするフェンシングなど、「各場面で感動した」と振り返る。
6月、地元の青森市に帰省した佐藤選手は、認知症で入院中の父を見舞い、固い握手をして誓った。「自分は五輪で頑張るから、おやじも頑張ってよ」。
[時事通信社]
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