「世界一」の練習量、自信に=得意技、こつこつ磨き―レスリング金の桜井選手〔五輪〕
金メダルに輝いたレスリング女子57キロ級、桜井つぐみ選手(22)=育英大助手。幼少から磨いた得意技と「世界一」の練習量で培った自信をマットにぶつけ、栄冠を手にした。
優勝が決まると笑顔を見せながら小さく手をたたき、喜びをかみしめた。日の丸を両手に念願のウイニングランをし、堂々とマットを後にした。
父優史さん(48)が高知県で立ち上げたクラブで2歳の時にレスリングを始めた。幼い頃は「どんくさくて機敏さもない。格闘技向きの性格ではなかった」と優史さん。だが、こつこつ取り組む努力家だった。
小学4年の頃、両腕で相手の腕をつかむ「腕取り」を教わった。地味だが、相手の体をコントロールし、技につなげやすくするために重要だ。他の子どもたちが投げ技などの派手な技に飛びつく中、地道に繰り返した。
中学時代は相撲部での稽古に加え、父の下でレスリングが週6日。帰宅後もタックル練習や懸垂をこなし、全国中学生選手権3連覇を達成した。
順調に見えた父との二人三脚だが、高校生になると反抗期が訪れる。高2の秋、指示を無視するようになった桜井選手に怒った優史さんは練習場に姿を見せなくなった。
「来てください、つぐみは変わりました」。周囲に促され、3日ぶりに赴くと、別人のようにレスリングに取り組む娘がいた。「中学生にもアドバイスを求め、本気で強くなろうとしていた」と振り返る。
桜井選手は、優史さんの旧友の柳川美麿さん(48)が監督を務める育英大(群馬県高崎市)に進学後も、朝と夜、計4~5時間汗を流す日々を送った。「しんどい試合よりも練習の方がきつい」。桜井選手もそう漏らすほどの練習量は6分間の試合を最後まで戦い抜く強さにつながる。柳川さんは「世界で一番練習している、大丈夫だ」と励ました。
流した汗の量を自信に変え、世界選手権を3連覇した桜井選手。小学生で覚えた腕取りは偉業を達成する武器になった。気力、体力ともに充実した22歳が、大舞台で実力を示した。
[時事通信社]
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