創業家経営からの脱却課題=新社長、再生へ「忖度せず」―4カ月半ぶり記者会見・小林製薬
小林製薬は8日、「紅麹(べにこうじ)」配合サプリメントの健康被害問題の公表後、3回目となる記者会見を約4カ月半ぶりに開き、新旧社長が謝罪した。同日就任した山根聡社長は創業家に忖度(そんたく)せずに経営を進める考えを強調したが、問題把握後に適切な対応を取らなかった創業家経営から脱却できるかどうかは不透明だ。
「失った信頼はすぐに回復できない」「小さな信頼を重ねたい」。山根氏は会見で「信頼」を何度も口にし、原因究明や再発防止策の策定、被害者への補償に注力する考えを示した。問題の背景に小林一雅前会長ら創業家一族が経営に深く関わってきた企業風土を挙げ、「同質性」と表現。「良いときは一枚岩で回るが、逆になると負の方に回る」と認めた。
山根氏は、今後は創業家に「忖度はしない」と明言し、「同質性」の解消を進める考えを示した。
しかし、被害の拡大防止へリーダーシップを発揮できなかった創業家経営の影響はなお残る。社長を退任した小林章浩氏は補償担当として取締役に残り、一雅氏は月額200万円の報酬を受け取る特別顧問に就いた。財界からは「甘い体制」(新浪剛史経済同友会代表幹事)との批判が相次ぐ。
今後の忖度を否定した山根氏も、創業家には「株主だから、考え方に耳を傾けるのは当然」とも指摘。「是々非々」で対応する構えで、創業家の意向に左右されずに経営を進められるかはおぼつかない。
紅麹問題を巡り、同社は被害症例の公表が遅れ、サプリ摂取との関連が疑われる死亡者を厚労省に報告していなかったことも問題となっている。記者会見も、サプリとの関連が疑われる死亡者数が増えていく中で4カ月以上開かず、情報開示に消極的な姿勢が目立った。山根氏は「説明責任を果たすには会見が必要。今後、必要に応じてする」と語ったが、問題の原因はいまだ特定されておらず、再発防止策の策定時期も見通せていない。信頼回復への道は依然険しい。
[時事通信社]
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