カウラ事件、風化防止へ努力=「戦争のむなしさ」語り継ぐ―豪
【カウラ(豪南東部)時事】第2次大戦中にオーストラリア南東部カウラで起きた日本人捕虜脱走事件から5日で80年を迎えた。収容所跡地では発生時刻の午前2時前に当時の模様を再現し、日豪両国から参加した約600人が犠牲者を追悼した。地元住民らは悲劇の歴史の風化を防ぎ、次世代へ引き継いでいこうと努力している。
真冬の南半球の寒空の下、日本兵が収容されていた宿舎跡から真っ赤な火の手が上がり、脱走を阻止しようと豪兵が放った銃声が響く―。日本側234人、豪側4人が死亡した事件の再現を、眠気をこらえて集まった参加者は静かに見守った。司会者は「捕虜になるのは恥だと日本兵たちは教え込まれていた」と背景を解説した。
父親が収容所の看守だったというゴードン・ロールズさん(73)は「未明に寒風の吹きすさぶ中、戦争のむなしさを肌で感じてもらう機会になった」と再現の意義を説明する。「この歴史を繰り返してはならない。参加者が子供らを連れて戻って来て、後世に語り継いでほしい」と訴えた。
カウラ市のルース・ファーガン市長は「追悼行事で人と人とのつながりができ、それが国と国との良好な関係を築くことになる」と語った。穂坂泰外務政務官は「事件を風化させない取り組みを日本政府としても後押ししていく」と述べた。大戦中に捕虜収容所があり、カウラ市と交流のある新潟県上越市の小田基史副市長らも行事に参加した。
[時事通信社]
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