悪夢拭い去り、涙=森「五輪っていいな」―トランポリン〔五輪〕
「二度と出たくない」とさえ思った五輪の舞台。森は見事に力を出し切り、笑顔で終えた。日本勢初のメダルには届かなかったが、「やり切れてよかった。大会を楽しめた」。演技直後は笑みが絶えなかった。
「頭がおかしくなる」というほど緊張したが、会場で大歓声を聞くと気持ちが落ちついた。予選1回目は安定した演技で54点台後半をマーク。2回目は高得点の目安となる55点台に乗せ、6位で突破した。決勝は移動が少ない持ち味を出し切れず予選から順位を上げられなかったが、丸山コーチと抱き合う姿には満足感が漂った。
2019年に世界選手権個人で日本勢初制覇。地元で開催された21年東京五輪は重圧につぶされるように大会前から調子を落とし、まさかの予選敗退で号泣した。絶望し、五輪が大嫌いになった。
一時は競技から離れ、興味があったアルバイトに挑戦。回転すし店で働いた。接客などを通じて競技に専念できるありがたさに気づき、トランポリンの世界に戻ろうと思えた。
東京五輪とその後の歩みには、多くの学びがあった。だから、パリに向けては「頑張りすぎず頑張る」と肩の力を抜いて臨んだ。「東京で五輪の印象は最悪だったが、五輪っていいなと感じた」。そう言いながら、両頬には大粒の涙が伝う。悪夢の3年前とは意味が大きく異なり、心が満たされてあふれ出たような涙だった。 (時事)
[時事通信社]
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