「日本の宝」が開花=新鋭の岡、衝撃的な金―体操〔五輪〕
歴代王者たちを押しのける、衝撃的なドラマ。初代表の岡慎之助選手(徳洲会)が鮮やかに金メダルをさらった。最終演技者だった張博恒選手(中国)の得点が出た瞬間に勝利が決まり、「やっと勝てた。けがを乗り越えてきてよかった」。橋本大輝選手らと喜びを分かち合うと、ゆかのフロア上で日の丸に身を包んで叫び声を上げた。
橋本選手と中国勢2人は、五輪や世界選手権個人総合の優勝経験者。序盤は五輪の「魔物」が襲いかかったかのような展開が続いた。張博恒選手がゆかの着地で失敗し、橋本選手はあん馬で落下。会場がどよめく中、岡選手だけは普段通りニコニコしながら淡々と美しい演技を重ねた。
2種目目のあん馬で首位に立ち、後半最初の跳馬は技の難度が低く3位に後退。次は得意の平行棒だ。誰もがうらやむ美しい倒立技を何度も決め、着地は小さく動いただけ。15.100点の高得点で、再び首位に浮上した。
緊張と重圧が増す最後の鉄棒は「冷静に、縮こまらず」と自らに言い聞かせ、バーに飛びつく。ダイナミックな「コールマン」を含む離れ技を3度決め、着地は後ろに少し跳ねてまとめた。最終演技者の張博恒選手には逆転する力はあったが、姿勢が大きく乱れるなど精度が低く、出来栄え点が伸びなかった。最後も、岡選手に勝利の女神がほほ笑んだ。
2019年世界ジュニア選手権個人総合王者で、所属先の米田功監督が「日本の宝」と評する逸材。22年に負った右膝の大けがで少し回り道はしたものの、パリでは団体総合金メダルの原動力にもなり、見事に才能を開花させた。
オールラウンダーとして最高峰の称号を手にしてもなお、「自分的にはしっくり演技できていない」と手放しでは喜ばなかった。底知れない20歳。「(内村)航平さんがやってきたように、勝ち続けられるよう頑張りたい」。理想が高いからこそ、今後も挑戦者として技を磨き続ける。 (時事)
[時事通信社]
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