「2番は嫌だ」心一つに=前夜集結、涙の誓い―体操男子〔五輪〕
最終種目の鉄棒を前に、首位中国と2位日本は3.267点差。逆転には厳し過ぎる状況だった。それでも日本勢にネガティブな感情はなかった。1番手の杉野は「絶対に後ろの2人はやってくれる」と信じ、大技「ペガン」を含むダイナミックな離れ技に成功。岡も持ち味の美しい演技で続くと、中国選手がミスを連発して日本は逆転に成功。最後はエース橋本が締め、5人は涙で勝利の喜びを分かち合った。
不安はあった。東京五輪個人総合王者の橋本は5月に右手中指の靱帯(じんたい)を損傷し、1カ月ほどまともに練習できなかった。6種目合計で世界トップレベルの高難度技をこなす体力は、パリに入っても戻らない。27日の予選は本来の力を発揮できず、首位中国に差をつけられて日本は2位だった。
決勝前夜。選手村の一室に全員が集まった。口火を切ったのは、東京五輪銀メダルの悔しさを知る主将の萱。「もう絶対に2番は嫌だ」。胸の内を明かすと、他のメンバーも涙を見せながら腹を割って話し始めた。橋本は「みんなで金メダルを取りたいと心の底から思えた」。心が一つになった瞬間だった。
団結を強めていたからこそ、橋本があん馬で落下した直後も萱や杉野がすぐに励まし、エースの心を支えた。谷川は成功こそしなかったが、跳馬で世界最高難度の「リ・セグァン2」に挑み、諦めない姿勢を見せた。橋本は「みんなに助けられた金メダル。この4人がいなければ絶対に取れなかった」。
「キング」と称賛された内村航平がいない五輪は、2004年アテネ以来。次の世代を担う「体操ニッポン」がパリで頂点に立ち、新時代の幕開けを宣言した。「運も味方したと思うが、気持ちを最後まで持ち続けることができた」。アテネの歓喜を知る水鳥寿思監督はそう言い、目を細めた。 (時事)
[時事通信社]
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