「水泳を楽しむ」=8年ぶりに五輪の舞台へ―競泳・渡辺選手〔五輪〕
「強くなる為には水泳を楽しむ!」。競泳男子200メートル平泳ぎの渡辺一平選手(27)=トヨタ自動車=が東京五輪の代表入りを逃した後、地元大分県の高校生に送った言葉だ。根っこにある「水泳が好き」という気持ちを胸に8年ぶりの大舞台に立つ。
渡辺選手は2016年のリオデジャネイロ五輪に初出場した。高校の水泳部で3年間指導した下城智宏さん(54)によると、東京五輪への出場資格を得られなかった後は地元に戻り、大小にかかわらず、一つ一つのレースに前向きに出場した。下城さんは「欲という欲を満たしちゃいけないんじゃないかというくらい追い込んでいた」と振り返る。
下城さんも「なぜ出られないのか、という悔しい思いで、1週間くらいもやもやしていた」といい、気分転換のために一緒に酒を飲みに行ったことも。東京五輪の話題は避けたが、渡辺選手は気持ちを整理しながら前に向かっている様子だったいう。「ああ、やっぱり(渡辺選手は)水泳が好きなんだと思った」と話す。
標準記録を突破して2位までに入れば出場が確実になるパリ五輪の代表選考会を直前に控えた今年の正月。帰省中だった渡辺選手は「先生、1番か2番になるかのハラハラはあるかもしれないけど、2番か3番かのハラハラはないです」と自信を見せ、その言葉通りトップで代表入りを決めた。
渡辺選手が地元を離れてからも、帰省すれば一緒に焼き肉を食べるなどの交流を続けている下城さん。「東京五輪に出られなかった悔しさがあったからこそ今回のパリがある。リオ五輪からの8年間は自分を見詰め直す試練として、(渡辺選手に)神様が与えたもの」と目を細めていた。
[時事通信社]
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