ひと味違った「団体金」=橋本、仲間に伝えた感謝―体操〔五輪〕
東京五輪個人総合王者の橋本は体力面に不安があり、つり輪と平行棒を除く4種目の起用にとどまった。それなのに、2種目目のあん馬で落下。「自分のせいで金メダルを逃すかもしれない」。両手を合わせてチームメートに謝った。仲間から掛けられた言葉は「絶対に諦めるな」。折れかけた心を、何とか保つことができた。
跳馬で高難度の「ロペス」を決めると、ほっとした表情。迎えた最終種目の鉄棒。直前に中国選手がミスを重ね、日本に千載一遇のチャンスが巡ってきた。最終演技者の橋本は、4人から活を入れられるように背中をたたいてもらう。会場で湧き上がる「ニッポン」コールには、思わず目が潤んだ。
杉野や岡の気迫が引き寄せたような相手のミスに助けられ、離れ技を一つ抜くなどの安全策を取り、着地までまとめた。2004年アテネ五輪の冨田洋之のような完璧な着地とはいかなかったが、目の前にいた大勢の観客が総立ちで祝福するのを見て、「最高だな」と思えた。
5月に右手中指の靱帯(じんたい)を損傷してから満足に練習できず、調整不足のままパリに乗り込んだ。東京五輪で逃した団体のタイトルを手にできたのは、仲間のおかげだと思っている。
金メダルが決まった瞬間、最初にチームメートに掛けた言葉は「ありがとう」だった。「みんなのおかげで、橋本大輝がもう一度奮起できた。これだけは言いたかった」。東京で手にした個人総合の金メダルとはひと味違う喜びを、存分にかみしめた。 (時事)
[時事通信社]
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