無口な少女、芽生えた闘争心=師の教え「ルールあるけんか」―柔道・舟久保選手〔五輪〕
柔道女子57キロ級舟久保遥香選手(25)=三井住友海上=は五輪初出場で銅メダルを獲得した。「柔道はルールのあるけんか」。恩師に植え付けられた闘争心で、無口な少女は世界と渡り合うまでに成長を遂げた。
富士山の麓、山梨県富士吉田市出身。5歳ごろ、地元のスポーツ少年団で柔道を始めた。小学校時代の恩師小泉直道さん(77)によると、自宅から道場までの約2キロを走って通い、県大会優勝を何度も果たした。
県内敵なし―。そう言わしめた舟久保選手を富士学苑中・高(同市)で6年間指導した矢崎雄大監督(44)の最初の印象は、「無口で不器用な子」。中学時代は体力強化に専念し、週3回、近くの観光名所「新倉山浅間公園」の五重塔に至る階段398段の走り込み5往復を課した。
根性もあった。「20本やるか」。中3の大会前、自信を付けさせようと、普段の4倍も往復させたが、舟久保選手は音を上げずやり遂げたという。
高校に上がり、矢崎さんが重視したのは精神面だ。「最強」と呼ばれた柔道家山下泰裕さん(67)の言葉を引用し、常々、「柔道はルールのあるけんか。絶対に引くな」と言い聞かせた。
ある合宿で、舟久保選手は他校の格上選手に真っ先に挑み、投げられても投げられても立ち向かった。矢崎さんは「相手の監督に謝られるくらい、ぼこぼこに投げられた」と笑う。団体戦ではあえて重量級の選手と当たらせ、闘争心を育んだ。
「彼女よりも柔道がうまく、センスのある選手は何人もいた。だが、彼女より負けず嫌いはいない」と矢崎さん。「『ウサギとカメ』ならカメ」の舟久保選手は寝技の研究にもコツコツ励み、得意技へと昇華させたという。
高校卒業後、三井住友海上でさらに実力を蓄え、昨年の世界選手権で準優勝した。矢崎さんは「まだまだ伸び代はある」。パリは通過点にすぎない。
[時事通信社]
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