阿部一、進化選び奮闘=「不安」原動力に連覇―柔道〔五輪〕
連覇を狙う金メダリストの多くが重圧との闘いを強いられるという。柔道男子66キロ級の絶対的な王者とみられていた阿部一も例外ではなかった。「苦しい思いの方が多かったが、やってきたことは無駄じゃなかった」。2021年東京五輪から3年間、弱みを見せずに歩み続けた26歳が、素直な胸の内を明かした。
「挑戦者の立場で臨んだ」という東京大会から追われる立場に。1日3回の練習を自身に課した。出稽古先では得意の担ぎ技を封印して足技のみで乱取りするなど、柔道の幅を広げてきた。
新しい減量法や調整の仕方にも挑戦。現状維持ではなく、進化を模索する道を選んだ。日本代表の古根川実コーチは、「怖かったと思う。やってきたことを正当化するには勝つしかないのだから」とその胸中を推し量った。
一切の妥協を拒否する姿に、所属先パーク24の吉田秀彦総監督は同じ金メダリストとしての経験を重ね、「勝ち続けると、いつか『やらされている練習』から『自分でやる練習』に変わる」と話す。吉田氏も現役時代に原動力となったのは「負けることへの不安」。その思いが王者を駆り立ててきたとみている。
阿部一は、「いくら練習しても練習しても大丈夫かな、強くなっているのかな」と恐怖心を抱き続けてきた。「その思いがパリ五輪という舞台でやっと報われた」。涙は見せず、さわやかな笑顔だった。 (時事)
[時事通信社]
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