支えたのは「ヤワラちゃん」の言葉=阿部詩、まだ24歳―柔道〔五輪〕
張り詰めていた糸が切れたように泣き続けた。連覇の懸かった柔道女子52キロ級。2回戦で敗れた阿部詩は「すべてを懸けて、この一日のためにやってきた。負けた瞬間は冷静に自分を保てなかった」と振り返った。
2021年東京五輪で兄の阿部一二三とともに「兄妹優勝」を達成した。それから3年、常に前向きな言葉で自分を鼓舞し、パリでの五輪連覇を目指してきた。だが、心に抱えていた葛藤を、正直に漏らしたことがある。
それは4月に行われた強化合宿での出来事だった。日本女子柔道の象徴だった「ヤワラちゃん」こと谷亮子さんが、自身の経験を語る場が設けられた。質問に立つと「注目されて過ごす日々で『自分が自分でない』と思ったときはありましたか」。谷さんの答えは「阿部詩を目指している小さい子もたくさんいる。いろんなことを力に変えていける選手になってほしい」だった。
五輪に5大会連続出場したレジェンドの言葉に、「(自分は)2回出るだけで、(谷さんに比べたら)ちっぽけだなって思って、心が軽くなった」。その上で「女子柔道といえば『ヤワラちゃん』とみんなが思い浮かべる。それを阿部詩に変えていきたい」と誓った。
連覇の夢こそ絶たれたが、まだ24歳になったばかり。「神様は乗り越えられない試練を与えない」。1996年アトランタ五輪決勝で涙をのんだ谷さんを支えてきた言葉だ。 (時事)
[時事通信社]
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