14歳吉沢、ここぞで大技=最高難度で勝負決める―スケートボード〔五輪〕
金が確定して迎えたベストトリックの最終5本目。14歳の吉沢は泣きだしそうな感情を抑えて滑り出した。ウイニングランの着地に成功し、からっと晴れたパリの空に向かって両手を突き上げる。「頑張ってきてよかった」。仲間の元に駆け寄ると、笑顔がはじけた。
予選から海外勢が不調で、敵になるのは赤間、中山と分かっていた。予選を首位で通過した吉沢は決勝の滑走順が最後。他の7人がミスをした後のランの1本目は珍しく着地がずれそうになったところを耐えた。メダルへの道筋ができた。
昔から負けず嫌い。ベストトリック3本目終了時点でトップには赤間がいた。どうしたら金に届くか―。4本目。その前に失敗した代名詞の「ビッグスピンフリップ・フロントサイド・ボードスライド」に再び挑んだ。デッキ(板)を空中で縦横に複雑に回転させる最高難度の技。階段10段分ほどの高さから仕掛けるには怖さがつきまとう。それを小学生にして習得し、今でも「自分を1位にしてくれる技」だ。驚異の96点台。これがメダルの色を分けた。
3年前の東京五輪はテレビで見ていた。当時はまだ無名。初代女王の西矢椛らの存在に刺激を受け、平日は放課後に3~4時間、休日は多い日で7時間もデッキに乗った。レベルアップのためならと、幼少期に習っていたトランポリンを最近になって再開。跳び上がった際に空中で姿勢をきれいに保つための筋力がついた。バランスに磨きがかかり、大技を次々と自分の物にしていった。
中学3年生。自分へのご褒美を聞かれると、ずしりと重いメダルを下げながら無邪気に答えた。「ラーメンが食べたい。ディズニーランドに行きたいな」。緊張や重圧から解放された、いつもの素直な吉沢だった。 (時事)
[時事通信社]
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