角田夏実、異色の原点=独自の柔道、磨いて金〔五輪〕
ともえ投げから、流れるような腕ひしぎ十字固め。「異端」とも言える戦いぶりに、柔道大国フランスの目の肥えた観客は大いに沸いた。女子48キロ級を制した角田。磨き上げた独自の戦いぶりで、この階級に谷亮子さん以来、20年ぶりの金メダルをもたらした。
「待て」のない寝技に特化したブラジリアン柔術。角田は無名だった東京学芸大時代に出合い、これを取り入れた。学生時代に一緒に練習していた柔術の世界王者、高本裕和さんは角田の技を書道に例える。一本を狙う豪快な柔道が「楷書」なら、角田の戦い方は崩した字体の「行書」。立ち技と寝技の切れ目がない。「ぶつ切りでなく、ストーリーを描いてやっている」。ともえ投げを受けた相手が手を付く位置を予測して関節技を狙うなど、計算され尽くした部分があるという。
学生時代は「寝技だけ。捨て身技だけ」とやゆされ、プライドが傷ついたこともあった。だが、膝の手術を受けた経験から社会人になって「もしかしたらきょうが最後の柔道になるかも」との覚悟を持つようになり、「何でもいいから勝ち上がる」と今のスタイルをさらに突き詰めるようになった。
念願の金メダルを手にし、「自分を信じて、どれだけ対策されても、最後までこの武器を使って戦った」と誇りを口にした角田。異色の柔道家が世界にしっかりと名を刻んだ。 (時事)
[時事通信社]
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