中国、「米不在」で影響力誇示=新興・途上国にアピール―ASEAN
【ビエンチャン時事】ラオスの首都ビエンチャンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の外相会議で、中国の王毅共産党政治局員兼外相は、遅れて参加した米国の「不在」を存分に活用。3日間の滞在中、各国外相らと精力的に会談し、新興・途上国への影響力を誇示した。
◇全方位外交
王氏は25日にラオス入り。到着早々、ロシアのラブロフ外相、議長国ラオスのサルムサイ副首相兼外相との会談に臨んだ。3氏は「アジア太平洋で域外勢力が(対立の)火をあおる事態を懸念する」と表明。日本やフィリピンなどと結束し、安全保障面で対中包囲網を強める米国の動きを暗にけん制した。
王氏はラオスへの出発直前の24日、ロシアの侵攻を受けるウクライナのクレバ外相と中国で会談したばかり。紛争当事国の外相と立て続けに会うことで、国際社会における「和平の仲介役」を演出した。
王氏は友好国だけでなく、国境問題で対立するインドにもアプローチ。ジャイシャンカル印外相との会談では、新興・途上国「グローバルサウス」の団結を訴えた。26日の中国とASEANの会議では「運命共同体」という表現を繰り返し、経済・地理的に切り離せない両地域のさらなる関係強化を主張。南シナ海のアユンギン(中国名・仁愛)礁を巡って領有権争いが続くフィリピンのマナロ外相とは主張の食い違いも目立ったが、緊張緩和へ向けた対話の継続で合意した。
◇米、存在感示せず
一方、ブリンケン米国務長官は会議最終日の27日のみ参加。訪米したイスラエルのネタニヤフ首相への対応が響き、慌ただしい滞在となった。
「ASEANは米国のインド太平洋戦略の中心だ」。ブリンケン氏は27日、関連会議の冒頭でこう述べ、バイデン政権が3年間で達成した両地域の関係深化を強調した。
米国ではバイデン大統領が11月の大統領選からの撤退を表明し、政権のレームダック(死に体)化が進むとの観測もある。トランプ政権の再来も取り沙汰される中、ブリンケン氏のラオス訪問には、米国のアジア重視の姿勢に変化はないと示す狙いがあった。しかし、結果的にイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が続くパレスチナ自治区ガザ情勢への対応を優先させる格好となり、一連の会議での存在感は王氏に見劣りした。
ブリンケン氏はこの後、ベトナム、日本、フィリピンなどアジア5カ国を歴訪する。日、比ではそれぞれ外務・防衛担当閣僚による協議(2プラス2)を開催。対中抑止力の強化について話し合い、巻き返しを図る見通しだ。
[時事通信社]
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