戦禍の母国に希望を=悲しみ乗り越えたウクライナ〔五輪〕
2年半近く戦禍が続くウクライナの選手団は計り知れない悲しみを乗り越え、パリ五輪にたどり着いた。同国メディアによると、参加選手数は過去最少の約140人。母国の凄惨(せいさん)な現状を発信し、国民の希望の象徴となるため「最も困難な五輪」に臨む。
選手団の中には家族、親戚、友人を失った選手もいる。ウクライナ・オリンピック委員会によると、ロシアの侵攻により選手、コーチは計500人近くが死亡。空爆などで500を超えるスポーツ施設が壊された。戦火を逃れ、拠点を国外に移した選手も多い。
ロシアと同盟国ベラルーシの選手は、国を代表しない「個人の中立選手(AIN)」として参加を容認された。ウクライナ五輪委は自国選手団に、AINとの接触禁止を勧告。フトツァイト会長は「私たちにとって、ロシアやベラルーシの選手は存在しない。あいさつもしないし、目も合わせない。平和の祭典ではない」と言った。
男子高飛び込みの18歳オレクシー・セレダは、侵攻開始後に父親が軍隊に入った。父と話せないことがつらいといい、「戦争が始まって全てが変わった。言葉がない」と不安を打ち明ける。
フェンシング女子サーブルで5度目の五輪となるオリガ・ハルランは、昨夏の世界選手権でロシア出身選手と対戦後に握手を拒否して失格となった。「全世界へのメッセージだった」と振り返り、「ウクライナは団結している。強さと自由を示し、希望と未来を国民にささげたい」。母国に光を照らす戦いが始まった。 (時事)
[時事通信社]
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