幕開けは美しく、強く=パリの街で史上最大―五輪開会式、舞台はセーヌ川〔五輪〕
100年ぶりにパリに戻ってきた五輪が美しく、力強く幕を開けた。街を会場に変え、セーヌ川の船上パレードでの入場行進。エッフェル塔前の式典。誰もが考えつかないような大胆なアイデアは時に批判の的にもなったが見事にやり遂げた。
大会のテーマは「広く開かれた」。それを表現するためにセーヌ川を舞台に選び、文化、歴史、多様性などを演出の一つ一つに明確に意味を込めた。開始直後から天候には恵まれなかったが、マクロン大統領の開会宣言とともに街のシンボル、エッフェル塔をライトアップして無数の光の雨を注いだ。パリらしさが全開となった演出に会場に集まった選手たちだけでなく、世界中の誰もが圧倒され、心を動かされた。大会組織委員会のエスタンゲ会長は「五輪は全ての問題を解決できるわけではない。しかし、この夜、みんなが一つになれば人類はどれだけ美しいかを思い出させてくれた」と語った。
パリの華やかさ、美しさが十分に伝わった。しかし、それだけでこの国は語れない。フランスには常にテロの不安がつきまとう。移民が多く、イスラム圏での内戦などが国内情勢に影響する。昨年からイスラム過激派によるテロが起き、国内のテロ警戒レベルが最大にまで引き上げられた。
安全面からセーヌ川での開会式には反対や代替地での実施を求める声が絶えなかった。それでもエスタンゲ会長は「フランスという国は脅威にさらされながらも大きなイベントを成功させた実績がある」。自国の力を信頼し、開催へ全力を尽くした。
絶対に成功させたい理由もあった。2015年に起きたパリ同時多発テロ。130人の死者が出るなどフランスにとって忘れることができない、悲しい出来事となった。今大会の聖火リレーでは当時、襲撃されて89人が犠牲となった劇場も巡った。セーヌ川での実施はテロに屈しない、脅威に負けないという姿勢の表れでもあった。強いパリ、強いフランスを示す。そんなメッセージも込められていた。
人々を魅了する古い街並みも開会式には重要な要素だった。パリには景観を維持するためさまざまな規制やルールがあり、住民はその中で生活している。時には我慢もしながら守り続けてきた街。そんな「レガシー」も開会式の一部となった。
前例のない、史上最大規模の開会式。多くの人々の記憶に刻まれ、フランスの長い歴史の1ページにもなった。 (時事)
[時事通信社]
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