トランプ氏破るも、人気低迷=「史上最高齢」最後まで足かせ―米大統領再選断念のバイデン氏
【ワシントン時事】バイデン米大統領(81)ほど多くの苦難を乗り越え、「異例」を重ねた政治家はまれだろう。3度目の挑戦となった2020年大統領選では、民主党予備選序盤で大苦戦したものの復活劇を演じ、本選で現職のトランプ前大統領(78)を打ち破った。ただ、就任時の「米史上最高齢」が常に足かせとなり、不人気の中で撤退に追い込まれた。
バイデン氏は東部ペンシルベニア州の地方都市で、苦労人の父親を見て育った。1972年に東部デラウェア州から上院議員に初当選した直後、交通事故で妻と幼い娘を失った。2015年には後継者と目されていた長男ボー氏=当時(46)=を脳腫瘍で亡くした。
親しい上院議員は、度重なる喪失が「政治家バイデン」を形づくったとし、「人を慰め、声に耳を傾け、つながりを持つ能力は並外れている」と語っている。
36年務めた上院議員時代は法務、外交畑を歩み、共和党のブッシュ(子)政権下で米国が対テロ戦争に突き進んだ時の外交委員長だった。オバマ元大統領がバイデン氏を副大統領に起用したのは、議会での豊富な経験に期待してのことだ。
ただ、度重なる失言や重要時の判断には疑問の声も上がる。ブッシュ(子)、オバマ両政権で国防長官を務めたゲーツ氏は、回想録で「重要な外交政策を巡り、彼は40年間、ほぼ全てで間違ってきた」と批判する。副大統領時代に「日本の憲法は私たちが書いた」と発言し、波紋を呼んだ。
大統領就任演説では「米国、国民を結束させることに全霊を注ぐ」と表明した。その一方、トランプ氏や熱狂的支持者を「民主主義への脅威」などと敵視。コロナ禍後に景気回復を実現したものの、歴史的なインフレに見舞われ支持率低迷の一因となった。
バイデン氏が最後まで苦悩したのは年齢だった。言い間違いやぎこちない動作、かすれた声など衰えは隠しようがなく、トランプ氏との討論会で精彩を欠き、一気に噴き出した撤退圧力を乗り越える力は、もはや残されていなかった。
[時事通信社]
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