マスク氏、トランプ氏に急接近=EV巡り相反も、右傾化で
【ニューヨーク時事】米電気自動車(EV)大手テスラなどを率いる実業家イーロン・マスク氏が、トランプ前米大統領に急接近している。今月、支持を正式表明し、トランプ氏を支援する政治団体に巨額献金を行うことも報じられた。EVを巡る見解で両者は相反しているが、マスク氏の右傾化した政治観がトランプ氏と共鳴するようだ。
マスク氏は2016年の大統領選では民主党のヒラリー・クリントン元国務長官、20年にはバイデン大統領に投票した。ただ、この2年ほどはバイデン政権の移民政策や労働組合重視の姿勢を批判。先週はカリフォルニア州で学校での性的少数者のプライバシーに配慮する州法が成立したことに激怒し、X(旧ツイッター)と宇宙企業スペースXの本社をテキサス州に移すと宣言した。
ただ、テスラはバイデン政権がEV購入者向けに展開している最大7500ドル(約118万円)の税額控除で最も恩恵を受けているメーカーだ。米EV市場で約5割のシェアを握ることから、他社よりはるかに大きなメリットを享受している。政権が進める自動車の排ガス規制強化も、EV専業のテスラには追い風だ。
トランプ氏は、排ガス規制強化について事実上の「EV義務化」だと攻撃し、大統領に返り咲けば政策転換すると明言。「一体誰がEVを運転したいんだ? 45分走ったら3時間(充電で)止まらないといけないのに」と、誤情報まで持ち出してEVをやゆしてきた。
それでもマスク氏とトランプ氏の間には奇妙な蜜月状態が生まれている。6月のテスラの年次株主総会で、マスク氏はトランプ氏が「理由は分からないが突然電話してくる」と明かした。マスク氏によれば、トランプ氏はテスラの新型EV「サイバートラック」の「大ファン」だという。
トランプ氏も今月20日の演説で「マスク氏が大好きだ」と親密ぶりをアピール。さらに「EVにはまったく賛成」だと前置きした上で、現政府のEV推進には反対する考えを説明するなど、テスラへの配慮をにじませた。
[時事通信社]
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