ウクライナ経済正念場=停電深刻、地下街真っ暗
【キーウ時事】ウクライナ経済が苦境に耐えられるか正念場に立たされている。ロシア軍による相次ぐ発電所への攻撃で電力不足が深刻化。首都キーウ(キエフ)の地下街は真っ暗だ。経済活動が落ち込み、2024年はマイナス成長に陥るとの予測もある。電力需要が増える秋以降をどうしのぐのか難題に直面している。
「停電でオーブンが使えないので注文は受けられません」。キーウ市内のピザ店で働くナタリアさんは、昼の書き入れ時の来店客に申し訳なさそうに説明した。停電が商売に響き、表情はさえない。地下街の暗いカフェでは客がスマートフォンのライトでメニューを見つめている。
ロシア軍は3月以降、ウクライナ全土の発電インフラを集中攻撃。キーウや北東部ハリコフなどでは全ての火力発電所が損傷した。ゼレンスキー大統領は、国内発電能力の半分が失われたと明らかにした。
事業者の多くが自家発電機を導入しているものの、「発注してもすぐに届かない」(飲食店)という。一方で、流通大手ノブスは「太陽光発電を一部店舗で導入した」(事業部)と、再生可能エネルギー利用を拡大する計画だ。
ウクライナでは、夏の電力消費量は冬の半分程度。現状の電力不足を考慮すれば「この冬は深刻な停電が不可避」(ノブス)と、市民生活や企業活動への打撃が懸念されている。
政府は24年の成長率が3.5%と、当初見通しの約4.5%から急ブレーキがかかると予想する。ただ、電力不足が消費や生産の足かせとなり、「違うシナリオになる可能性もある」(マルチェンコ財務相)と一段の下振れを警戒。経済への打撃を抑えるため、「失った発電能力の少なくとも半分を暖房シーズン前に回復させる」(スビリデンコ第1副首相兼経済相)考えだ。
一方、国際通貨基金(IMF)はマイナス1.7%に落ち込むリスクもあると分析する。経済が成長せず、税収などが確保できなければ、財政赤字を友好国や国際機関の支援で補う構造は改善しない。支援に後ろ向きなトランプ前米大統領が政権に復帰すれば、ウクライナ経済はさらに窮地に立たされる。
[時事通信社]
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