トランプ政権でも「核共有」維持=米、通常戦力は一部撤退か―独識者
【ハンブルク時事】北大西洋条約機構(NATO)の核政策に詳しいドイツ・ハンブルク大平和研究・安全保障政策研究所のウルリヒ・キューン氏は10日までに時事通信のインタビューに応じ、米国が再びトランプ政権となった場合も、ドイツなどに核兵器を配備する「核共有」は維持されるとの見通しを示した。一方、欧州配備の通常戦力を削減する可能性はあるとも指摘した。主なやりとりは次の通り。
―核抑止を巡るドイツ世論に変化は。
政治の中心部に議論が広がりつつある。ウクライナでの戦争によって、世論調査で初めて過半数のドイツ国民が(自国内にある)米国の核兵器の維持を支持した。重要な変化だ。
―トランプ前米大統領が返り咲けばどうなるか。
米国が正式にNATOから離脱することはないだろう。しかし、多数の通常戦力を欧州から引き揚げると私は考える。その場合、現代的な通常戦力を多国間で大規模に構築するには時間がかかるため、新たな問題が生じる。
一方、核兵器に変更はないだろう。欧州にある米国の核兵器は多くないし、核共有は比較的コストが低い。トランプ氏のチームには、核兵器が多くの問題を解決すると考える「強硬派」がいる。
―フランスの考えは。
仏政府の情報筋によると、マクロン大統領は自国の核兵器を欧州で使うことに前向きだ。しかし、(それに反対する)保守的な勢力がいる。
―米の核抑止に代わる方策は。
現時点ではない。だが、米大統領選の結果や、フランスが核政策の議論にどこまで前向きかによって変わる可能性はある。フランスには必要な分の核兵器しか保有しないという原則がある。欧州で(核抑止力提供という)任務を果たすには、より多くの核兵器が必要だろう。それに応じるのか。その場合、誰が資金を提供するのか。
―ドイツが独自に核を保有する可能性は。
ドイツの政治家が「独自の核兵器を持つべきだ」と言ったことは一度もない。ドイツには「決して単独で行動しない」という言葉がある。2度の大戦から得た大きな教訓だ。欧州内の多国間での核抑止に関する合意が提案されれば、ドイツは参加するだろう。
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◇ウルリヒ・キューン氏略歴
ウルリヒ・キューン氏 77年、独東部ライプチヒ生まれ。ハンブルク大院で政治学の博士号を取得後、ウィーン軍縮・不拡散センターや独外務省で研究。19年から同大平和研究・安全保障政策研究所で、軍備管理と新技術に関する研究の責任者を務める。今年3月、ドイツの核兵器政策についてまとめた「21世紀のドイツと核兵器 核の時代の転換点?」を出版した。
[時事通信社]
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