見張り、高度管理に不備=指揮官の連携にも課題―ヘリ衝突事故で調査結果・海自
東京・伊豆諸島の鳥島沖合で4月、海上自衛隊の哨戒ヘリコプター「SH60K」2機が訓練中に衝突、墜落した事故で、海自は9日、乗員の見張りや衝突回避のための「高度管理」が不十分で事故につながったとする事故調査委員会の報告書を公表した。2機はそれぞれ別の指揮官の指示で動いており、両指揮官の連携にも課題があったと指摘した。
衝突したのは長崎県の大村基地所属で第4護衛隊群司令が指揮していた16号機と、徳島県の小松島基地所属で護衛艦「すずなみ」艦長が指揮していた43号機。両機は衝突約4分前にそれぞれ潜水艦をソナーで捜索する指示を受け、別の場所から同じ地点に向かっていた。
16号機が高度や速度を落とすため自動飛行で時計回りに旋回したところ、直進する43号機と進路が交錯。16号機の左側面に43号機が突っ込む形で衝突したとみられる。
回収したフライトレコーダーの解析では、両機とも互いの存在は認識し、衝突2分前に43号機の乗員が機長に相手の距離や方位を報告する音声も確認された。だがその後、両機とも接近を警戒する様子はなく、衝突の瞬間まで回避操作は取られなかった。調査委は夜間で相手機との距離を誤認したり、他の作業で見張りが不十分になったりした可能性を指摘した。
海自では2021年にも鹿児島県・奄美大島沖でヘリ同士の接触事故があり、再発防止のため近接時は飛行高度を分ける「高度セパレーション」を原則とした。しかし、今回の事故は指揮系統が別で、指揮官同士の連携も不足したため、2機の位置関係や任務が十分認識されず、高度セパレーションが設定されなかった。
海自は見張りの徹底に加え、搭乗員に夜間の見え方や自動飛行の軌道について教育することや、最上位指揮官の責任で高度管理を厳格化するなどの再発防止策を公表した。中止していた複数機での訓練飛行は9日から段階的に再開する。
木原稔防衛相は同日の閣議後記者会見で「8人の隊員を失ったのは痛恨の極み。この先一人の犠牲者も出さない決意で再発防止に全力を挙げる」と述べた。
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