実質賃金、マイナス幅拡大=1.4%減、基本給上昇も物価高で
8日発表された5月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)では、物価の変動を反映させた実質賃金が前年同月比1.4%減だった。26カ月連続の減少で、マイナス幅も前月(1.2%減)から拡大した。今年の春闘での高水準の賃上げを反映し、基本給は31年ぶりの伸び率を記録。実質賃金のプラス転換へ明るい兆しも見られるが、物価高のペースには追い付いていない状況だ。
連合の集計では、今春闘は33年ぶりの高水準の賃上げ率を達成し、基本給を底上げするベースアップも多くの組合が獲得した。この結果、5月は基本給を中心とする「所定内給与」が2.5%増と1993年1月以来、31年4カ月ぶりの高い伸びとなった。従業員30人以上の事業所に限れば3.6%増と、実質賃金の算定に使用する消費者物価指数(3.3%増)の伸びを上回った。
もっとも、従業員30人未満の所定内給与は0.7%増にとどまる。中小・小規模事業者への賃上げが広がりを欠く中、円安による物価高の再燃もあって、政府の掲げる「物価を上回る賃金の上昇」の目標実現は道半ばだ。
実質賃金のプラス転換の時期を巡っては、政府による電気・ガス料金補助が8月の使用分から再開される影響で、「(物価統計に反映される)9月以降、プラスに転換する確度が高まっている」(明治安田総合研究所・吉川裕也エコノミスト)との見方が出る。
ただ、補助金の効果は一時的で、持続的に実質賃金のプラスを維持・拡大していくためには、最低賃金の引き上げに加え、来年の春闘に向けて中小・小規模事業者を含めてどこまで賃上げの動きが広がるかがカギを握りそうだ。
[時事通信社]
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