安心できる職場が士気高める=差別構造、解体を―国連作業部会・イェオファントン氏
国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会のピチャモン・イェオファントン専門委員は7日までに時事通信のインタビューに応じた。日本の重要課題として「性差などに関する根深い社会通念が差別と不平等を生み出す構造を早急に解体すべきだ」と強調。社員のやりがいの低下を防ぐには「安心できて、尊重されていると感じられる職場環境の確保が取り組みの中心となる」と話した。
作業部会は6月下旬、日本の企業活動に伴う人権侵害やその改善への取り組み状況に関する調査報告書を国連人権理事会に提出。イェオファントン氏はその策定に主導的な役割を果たした。同氏は日本政府と企業の取り組みに関し「前向きな進展」が見られると評価。一方で女性や障害者、性的マイノリティー、外国人労働者、先住民族や被差別地区を巡る職場差別に懸念を表明した。
その上で、企業での多様性の確保に関し「会議の場に女性がいたとしても、安心して懸念や自分の考え方を共有する機会が与えられなければ、参加したとは言えない」と指摘。障害者に対する差別的待遇の実例としては「隔離された場所で単純労働に従事させられているとの報告を多数受けている」と明かし、それぞれの特性に合った役割が与えられるべきだとの考えを述べた。
外国人労働者を巡っては、労災事故が起きた際に速やかに医療を受けられなかったり、抑圧的な環境下で自殺に追い込まれたりした例もあると危惧した。
報告書は政府に独立した国内人権機関の迅速な設置を要請した。イェオファントン氏は、労働者がトラブルに直面した際に「救済」を受けられる独立人権機関が設置されていれば、旧ジャニーズ事務所(現SMILE―UP.)の性加害問題も「深刻になる前に対処できた可能性がある」と指摘した。
また、政府が2020年に策定したビジネスと人権に関する行動計画の改定作業を進めていることを評価する一方、現行計画に関する認知も地方では進んでいないとして、政府は周知に努めるべきだと強調した。
[時事通信社]
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