総選挙見据え、入念準備=要人警護、急な演説に対応―安倍氏銃撃2年
安倍晋三元首相銃撃事件は、要人警護の在り方を抜本的に見直す契機となった。事件後初めてとなる衆院解散・総選挙を見据え、警察庁と各都道府県警は演説場所の事前調査を行うなど入念な準備を進めている。
事件では奈良県警の警護計画に問題があったとされ、警察庁は2022年8月から、都道府県警任せだった警護計画案を全て事前審査する仕組みを開始した。同庁が審査した計画案は今年6月末時点で約6300件に上り、幹部は「教訓が蓄積されている」と話す。
ただ、総選挙となれば全国から一斉に計画案が提出され、警察庁の負担は重い。選挙遊説は直前に決まることが多く、元首相銃撃事件でも県警に日時や場所が伝わったのは前日午後だった。
このため急な対応を迫られても計画案の策定や審査が確実にできるよう、警察庁は都道府県警と候補地を下見する「予備審査」を実施。これまでに演説の実績がある駅前広場やホールなど約700カ所を下見した。主催者側への聞き取りを踏まえ、聴衆との距離を確保できるかどうかや、死角の有無などを確認し、警護員の配置を検討する。安全上問題があると判断すれば、代わりの場所を探すよう求める。
23年4月には、遊説中の岸田文雄首相に爆発物が投げ込まれる事件が発生。警察庁は、受付での金属探知検査など、安全対策を徹底するよう主催者への働き掛けを強化している。
政治家の間では、選挙戦での有権者との触れ合いや距離の近さを重視する考えが根強い。ある幹部は、手荷物検査などについて「事前に(政治家側の)理解を得ていても、選挙情勢によっては協力してもらえないケースがあるかもしれない」と懸念。別の幹部は「あらゆる事態に対応できるよう計画を作る」と、再発防止に向けて気を引き締めている。
[時事通信社]
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