被災住宅を憩いの場に=住人遺志受けNPO運営―西日本豪雨6年・岡山県倉敷市
災害関連死を含め300人超が犠牲となった2018年7月の西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市真備町の民家が4月、地域住民の交流施設として生まれ変わった。「わが家を地域の居場所に」。被災後も住み続けて亡くなった住人男性の遺志を引き継ぎ、同市のNPO法人が人々の憩いの場としてリニューアル。災害から6年が過ぎた今月下旬にも母屋でカフェの営業を始める予定だ。
この民家は木造2階建ての日本家屋で、豪雨災害では1階天井付近まで浸水し、全壊判定を受けた。80代で1人暮らしだった住人男性は4カ月間の避難生活を経て家に戻ると、最低限のリフォームを施した離れに住み続けた。
21年5月に89歳で亡くなった際、「わが家を地域の居場所に」と希望し、生前から介護支援を受けていた地元のNPO法人「ぶどうの家わたぼうし」に託した。
NPO法人は家屋の活用法について近隣住民らと協議し、「皆が気楽に集まれる場所」とすることに。ただ、母屋は被災後、手つかずの状態だったため、損傷が激しかった1階部分を中心に、ボランティアらも加わって昨夏から改修工事を進めた。
被害の実態を後世に伝えようと、浸水の痕跡が残る壁の一部を残し、利用者が見られるようにした。NPO法人の津田由起子理事(59)は「『ここまで水が来たんだ』と見える形で残した」とその狙いを語る。
今年4月にオープン。住人男性にちなみ「土師邸」と名付けた。平日は無料開放し、施設の使い方も利用者に委ねている。交流のきっかけにしてもらおうと、庭にはピザ窯を設置した。津田理事は「コミュニティーの維持・強化に向けたその活動拠点が一つ増えた。誰もが気軽に来られるような、皆の居場所になってほしい」と期待を込める。
[時事通信社]
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