最高裁で適用除外、2件のみ=「除斥期間」の壁高く
強制不妊の被害を巡る訴訟で、原告と国の勝敗を分けてきたのが「除斥期間」を適用するか否かの判断だった。不法行為から20年が経過すると自動的に損害賠償請求権が消滅すると解釈されてきた民法の規定。過去に最高裁が適用除外としたのは2件のみで、被害を訴える側にとって高い壁となってきた歴史がある。
改正前民法の724条は賠償請求権について、被害者やその代理人が損害や加害者を知った時から3年間行使しない時は時効によって消滅すると規定。後段で「不法行為から20年を経過したときも同様とする」と定めていた。
最高裁は1989年、後段の規定について「一定の時の経過によって法律関係を確定させるため画一的に定めたもの」と解釈。加害者側が請求権の消滅を主張しても賠償命令の対象となり得る時効とは異なるとの考えを示した。
あるベテラン裁判官は「判例として確立し、除斥期間が制限されるのは極めて例外的という状況が続いてきた」と話す。
例外の一つが東京都足立区の小学校教諭だった女性=当時(29)=を殺害した男が公訴時効成立後に自首し、遺族が損害賠償を求めたケース。男が女性の遺体を26年間隠していたため遺族が把握できない状況だったことを踏まえ、最高裁は2009年、除斥期間を適用せずに一審より賠償額を増やした東京高裁判決を確定させた。
もう1件は種痘の予防接種を受けたことが原因で知能障害や運動障害となった男性側が約22年後に国を訴えた訴訟で、最高裁は98年、除斥期間適用について「心神喪失の原因を与えた加害者が賠償義務を免れる結果となり、著しく正義・公平の理念に反する」と指摘。国勝訴とした二審東京高裁判決を破棄し、審理のやり直しを命じた。
[時事通信社]
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